第三章 リベン珠
第36話 月の都よ、私は帰って来た!
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いたのだ。そして、その者が求める限り『全てを受け入れてくれる』そんな幻想郷の残酷でありながらも優しい性質に彼女も惹かれる所があった訳である。
第二に、彼女自身、もう『逃げたく』はないからである。確かに今回の話に乗れば今よりもいい生活は出来るかも知れない。だが、それは今の彼女自身から逃げる事に繋がるのだ。鈴仙はもう自分を捨てるような行為は二度としたくはなかったのだ。
第三に、自分には既に永遠亭の者達が家族同然になっていたからである。厳しいがちゃんと優しさも見せてくれる永琳、だらしないもののどこか憎めない上にここぞという時は主としても決めてくれる輝夜、何かと世話を焼かせてくれるが何だかんだで気があうてゐ。そして、新たな永遠亭の家族となった勇美……。
それらの事を鈴仙は切実にサグメに伝えていったのだった。
その鈴仙の発言を、サグメは実に真摯に受け止めていた。そして最後まで話を聞き終えた後にこう言葉を紡いだのである。
『鈴仙。今のあなたの自分を大切にする心、忘れてはいけませんよ。そして良い帰る場所と、良い家族が出来たのですね』
「はい」
サグメのその言葉に、鈴仙は素直に頷いたのであった。それは今しがた自分がサグメに伝えた事に嘘偽りはないからである。
そして、その内容を逃さずに端から聞いていた勇美の表情も綻んでいたのだった。
「鈴仙さん。私の事を家族だって認めてくれるんですね?」
「ええ、当たり前じゃないですか」
喜びの表情を見せる勇美に対して、鈴仙の方も心地よい笑みを見せながら返した。
それを見ながら、微笑ましく思いつつサグメは結論付ける。
『鈴仙、あなたの想い、しかと受け止めました。ここはあなたの意思を尊重しましょう』
その言葉はサグメの本心であった。決して子供を自分の思い通りに動かしたい毒親が外面を取り繕う為に言う時の台詞とは全く違う、サグメの嘘偽りない本当の考えである。
そんなサグメの切実な想いを受けながら鈴仙は言った。
「サグメ様……ありがとうございます」
ここに鈴仙の今後の方針は決まったのである。
これで話は全て終わっただろうか? 否、まだ最後に大事な事が一つ残っているのだ。その旨をサグメは言葉に紡いでいく。
『では、これにてあなた方の処遇についての話は終わりましたね。それでは最後に勇美さん、あなたにはプレゼントがあります。それもとびっきりのがですね』
そうどこか茶目っ毛を出しながらサグメはそう言ったのだった。これには勇美は頭に疑問符を浮かべた。
一体何だろうか。今しがた自分達は月の遺産の一部という贅沢な施しを受け取ったばかりである。それ以上のプレゼントとは何だろうか。
そう思っていた勇美であったが、その疑問はすぐに解消される事となるのだった。何故なら今勇美の視界に入った人物がその答
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ