序章 1945年11月5日
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西暦1945年11月5日 大日本帝国九州地方 鹿児島県鹿児島市
アメリカ合衆国陸軍第6軍所属のジェームス・ミラー上等兵は、自身の属する歩兵師団の兵士達とともに、鹿児島湾内の浜辺に立っていた。
桜島を望む事の出来る場所にあるこの海岸は、かつて400年近く前にイエスズ会所属の修道士フランシスコ・ザビエルがキリスト教布教の目的を帯びて上陸した場所であり、今は数百隻の上陸用舟艇や戦車揚陸艦が海岸を埋め尽くし、日本を完全に屈服させるために何百両もの戦車が市街地に向けて突き進んでいた。
内陸部に顔を向ければ、そちらからは盛大な銃声と砲火が響き渡り、鹿児島を守備している日本軍と激しい戦闘を繰り広げている事が伺える。しかし自分達はあくまでも後方予備部隊で、もし敵の抵抗が激しければ直ちに前線に赴く事となるのだが、その様子は一向に感じられなかった。
「おいジェームス、聞いたか?ナガサキとクマモトに上陸した連中は、ジャップの爆撃機の奇襲と、山地での戦車の待ち伏せを食らって撤退したらしい。ジャップは本土に色々と新兵器を隠し持っていたみたいだ」
「ああ、聞いたよ。紙装甲に貧弱な火力しかない軽戦車だらけかと思えば、ウチのシャーマン並みの性能を持った戦車に返り討ちにされたそうだな。おかげでオキナワのパーシング部隊が派遣される事になったそうだし」
「無様にも程があるな…だが今年の8月に入って、いきなりジャップは盛り返し始めたよな…チバのクジュウクリ・ビーチに向かった連中はオキナワで沈んだはずのヤマト級戦艦の奇襲で壊滅的打撃を受けたらしいし、少なくとも長期戦は免れないだろうな」
1945年8月以降、日本対連合軍の戦況は劇的な変化を迎えていた。当初連合軍はダウンフォール作戦に際し、日本軍の特攻を主体とした迎撃で相当な大損害を被るものと考えられていたのだが、実際に作戦を実施したところ、それは連合軍の試算を遥かに超えるものとなった。
まずマリアナ諸島から飛んできた爆撃部隊の中継地であった硫黄島の飛行場が、突如出現した戦艦部隊の艦砲射撃で壊滅し、日本本土に対する空襲規模が低下。その隙に日本は体制を立て直し、防空網を強化。1か月後の爆撃再開時には、サイパン島から出撃したB29重爆撃機60機中40機超が地上からの対空砲火と新型の局地戦闘機に撃墜されるという甚大な被害を被る事となった。
また潜水艦部隊や陸海軍航空隊の爆撃機が上陸部隊の迎撃に現れ、大戦後半になって用いる様になった特攻のみならず、夜間に乗じての奇襲と赤外線追尾式誘導爆弾を用いた爆撃で2万近くの陸軍将兵と30隻以上の艦船を喪失する損害を被った。そして上陸後も、潜水艦や水上艦の、祖国の地形を活かしての奇襲攻撃や、内陸部でのゲリラ戦術主体の迎撃で相当数の損害を被り、連合軍司令部は兵士の士気状態や世論
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