第二章
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「けれどな」
「本当に毎年だからな」
「ネタは思う存分提供して」
「ここぞって時に負けて」
「特に優勝するチームのお得意様になって」
「ネタとして残るから」
「けれど今年は違うよ」
寿だけは確信している声だった、表情も無闇に明るい。
「投手陣は相変わらず、打線もいいから」
「若手が出て来て」
「それで助っ人もいる」
「だからか」
「バースの再来も来てくれたし」
寿はこのお決まりの言葉も出した。
「今年は打線も頑張るから」
「だといいけれど」
「今年こそ日本一になって欲しいけれど」
「どうかな、阪神」
「頑張って欲しいのに」
「だから大丈夫だよ、阪神を信じよう」
こう言ってだった、寿はクラスでも阪神のこと今年は優勝それも日本一を果たすと公言していた。彼は実際に確信していた。
そして開幕となってだった。
三連勝した時に彼は家で言った。
「僕の言った通りだろ」
「今年は阪神強いっていうのね」
カープは負けたので憮然としている千佳は満面の笑顔の兄にその顔で返した。
「そうだっていうのね」
「開幕見ただろ」
「三連勝ね」
「このままな、スタートダッシュでな」
それでというのだ。
「もうな」
「阪神優勝だっていうの」
「そうだ、それでお前には残念だけれどな」
「今年は阪神が優勝で」
「カープはよくて二位だ」
それで終わるというのだ。
「そうなるからな」
「あのね、そう言ってね」
毎年とだ、千佳は憮然としながらも冷静に返した。
「開幕、春先はいつも強いけれど」
「それからか」
「いつも調子落とすでしょ、特に夏ね」
高校野球の時にはというのだ。
「駄目になるでしょ」
「いや、今年は若手頑張ってるしピッチャーも揃ってるぞ」
「だから大丈夫ね」
「絶対にな」
「ピッチャー頑張っても打線は調子落としてるでしょ」
夏になればというのだ、高校野球で本拠地阪神甲子園球場が使えなくなり遠征が続き疲労が蓄積してしまうのだ。
「これも毎年」
「若手多いのにか」
「それも毎年言ってるし」
実際に寿は毎年言っている。
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