第一章
[2]次話
五人の娘を
この時河原崎麦人は妻の博美にこう言った。
「子沢山はな」
「子宝だから」
「いいが」
しかしと言うのだった、三十程の最近腹が出て来たのを気にしている黒髪の男だ。面長で少し色黒で目は小さく背は一七〇程だ。
「しかし双子の後でな」
「三つ子はね」
妻も言った、見れば今は腹が大きくなっている。黒髪を長く伸ばしていて艶やかな感じの目で顎の先はやや尖っていて口は大きめで唇は赤い。眉は細く背は一五九程だ。
「想像もしていなかったわね」
「ああ、五人か」
「凄いわね」
「しかも五人共女の子か」
「確かね」
妻はここで夫にこう言った。
「王貞治さんと中西太さんはね」
「ああ、スラッガーだったな」
「お二人共ね」
「あれだな、お子さんは娘さん三人だったな」
「そうだったわね」
「中村紀洋さんもな」
この元プロ野球選手もというのだ。
「そうだな」
「娘さん三人ね」
「お子さんはな」
「そうだったわね」
「それで稲尾和久さんは」
夫は鉄腕と呼ばれた偉大なピッチャーの名前を出した。
「四人だ」
「娘さんが」
「そうだった、しかしな」
「私達が五人ね」
「その人達より上か」
「女の子が五人って」
「そうそうないな」
こう妻に言った。
「そうだな」
「漫画だと六人ね」
「六つ子だな」
「男の子ばかりね」
「あの漫画よりましか?」
「いえ、女の子の方がよ」
妻は夫にこう返した。
「男の子よりもね」
「育てるの大変か」
「そうなのよ」
そうだというのだ。
「これがね」
「そうなのか」
「そうよ、私も両親見て来たけれど」
「お義父さんとお義母さんか」
「ええ、兄さんよりもね」
「奥さんの方にか」
「ずっとお金と手間がね」
その両方がというのだ。
「かかるってね」
「言われているのか」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「女の子五人だとね」
「男の子六人よりもか」
「大変だと思うわ」
「そうか、じゃあうちは」
「大変よ」
相当にというのだ。
「これがね」
「そうなんだな」
「だからこれから覚悟してね」
「子供達を育てないといけないか」
「そう、五人共公平にね」
ただ育てるだけでなくというのだ。
「そうしないと駄目よ」
「子育ては贔屓しない」
「これは鉄則でしょ」
「それはな」
夫も頷いた。
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