第四章
[8]前話
「今のうちにね」
「スカウトしてですね」
「来てもらおう」
「それで秘書の人員不足を補うんですね」
「そして新人も育てていってね」
そうしてと言ってだ、専務は千景をそのまま総務部に残る様にした。実際に優秀な秘書がスカウトされて採用されてだった。
八条自動車は優秀な秘書を得た、そしてその議員は選挙で無事に落選し見事数々の疑惑を追及されて塀の中の人となった。
千景はそのまま総務部で働き続けた、やがて彼女は結婚したが。
「若し妊娠しても」
「申し継ぎはだね」
「しておきますので」
千景は白石に話した。
「その間お願いします」
「そのこともだね」
「考えています」
「それじゃあ頼むよ」
「はい、ですが子供が出来ても」
千景は白石にさらに話した。
「このままです」
「働いてくれるんだね」
「幸い我が社は子育てのフォローもしっかりしているので」
このこともあってというのだ。
「そうさせて頂きます」
「そうなんだね、ただ」
「ただとは」
「若し我が社がそちらへの福利厚生が弱かったらどうだったかな」
白石は千景にこのことを問うた。
「丹羽さんは今みたいに言えたかな」
「無理だった可能性はあります」
千景は白石にはっきりとした声で答えた。
「退職して子育てに専念することもです」
「考えられるんだ」
「はい、会社のフォローがなければ出来ないこともあります」
「働くことも出来なくなるんだね」
「その場合もあります」
「欠かせない人にも欠かせないことがある、か」
白石は千景の言葉を聞いて述べた。
「そうなんだね」
「そうですね、誰でもです」
「欠かせないことがあるんだね」
「会社で出来ることなり法律でそうしてくれないと」
どうしてもというのだ。
「無理な場合もあります」
「それは誰でもだね」
「そうだと思います」
千景は白石に答えた、白石はその言葉に頷き自分の立場から企業のことを福利厚生の面からも考える様になった、そして彼は八条自動車の企業の福利厚生の改善にも貢献することになったがそれは千景との話がはじまりであった。欠かせない人もまた欠かせないことがあるとわかったのでそうしたのである。
欠かせない人 完
2020・10・15
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