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蛍合戦
第三章

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 彼は二人を連れて夜に船で海に出た、そしてだった。
 壇ノ浦に向かったが愛美は夜の海を眺めつつりみに言った。
「何か夜の海ってね」
「どうしたの?」
「何時見ても怖いわね」
「ああ、何がいるかわからなくて」
「お昼だと青くて奇麗だって思うのに」
 それがというのだ。
「夜だとね」
「真っ暗でね」
「波音は聞こえるけれど」
 それでもというのだ。
「けれどね」
「真っ暗で何も見えなくて」
「それでね」
「それはね、私もね」
 船、漁船の甲板の上からその夜の海を見てりみも言った。
「思うわ」
「そうよね」
「ええ、随分とね」
「怖いわよね」
「何がいてもね」
「おかしくないわね」
「そして何が出て来てもね」 
 それこそ巨大な化けものなり妖怪なりがだ。
「それでもね」
「そうした風に思ってね」
「怖いわ」
「実際にね」
「そうだろ、夜の海ってのはな」
 実際にとだ、柳崎も言ってきた。
「こうしたな」
「真っ暗で、ですか」
「ちょっと油断するとな」
 それでとだ、彼は愛美に答えた。
「船が来たり潮に舵取られたりな」
「危ないんですね」
「そうした場所なんだよ」
「そうなんですね」
「けれど漁師ってのはな」
「夜に海に出てですね」
「仕事するからな」
 それでというのだ。
「慣れてるんだよ」
「夜の海にですね」
「ああ、じゃあな」
「これからですね」
「壇ノ浦に行くからな」
 そこにというのだ。
「いいな」
「はい、それじゃあ」
「蛍いたらいいな」
「叔父さんも見たいの」
「ああ、二人の話を聞いたらな」
 柳崎は今度は姪に応えた。
「わしもな」
「見たくなったの」
「だからな」
「それでなのね」
「今みたいに言ったんだよ」
「そうなのね」
「ああ、じゃあ壇ノ浦に行くからな」
「それじゃあお願いね」
「ただ救命胴衣は着けてな」
 見れば叔父は既に着けている。
「絶対に海には落ちない様にしろよ」
「安全には気をつけろっていうのね」
「二人が話した通り夜の海は怖いんだ」
 このことはその通りだというのだ。
「だからな」
「それでなの」
「もう絶対にな」
 安全のことはというのだ。
「第一だよ」
「気を付けないと駄目ってことね」
「蛭も危ないけれどな」
 それでもというのだ。
「夜はな」
「余計にだから」
「ああ、本当にな」
 くれぐれもという口調での言葉だった。
「気をつけろよ」
「だから救命胴衣も着けて」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
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