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恐ろしい戦車
第三章

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 バランスが取れていた、それでこう言った。
「ならこの戦車で戦っていこう」
「はい、ソ連軍の重戦車が出て来ても」
「そうしていきましょう」
「あのスターリン戦車の様なものが再び出て来ても」
「そうしていきましょう」
「是非な」
 こうした話をした、そうしてアメリカ軍はそのバランスの取れた戦車を大量生産していった。そしてここでだった。
 ある軍人がこんなことを言った。
「思えばスターリン戦車は確かに巨大な砲を持っていた」
「そして重装甲で」
「衝撃的でしたね」
「とんでもない戦車でしたね」
「しかし内部は狭く乗員への負担は大きくだ」
 そうした戦車でというのだ。
「衝撃力はあったが」
「それでもですね」
「あの戦車はですね」
「乗員への負担が大きく」
「しかも巨大な砲と重装甲のあまりバランスが悪い」
「そうした戦車ですね」
「だから数は多くなかった」
 そうした諸般の事情によってというのだ。
「実はな」
「そうでしたね」
「その実は」
「非常に強力でしたが」
「製造も難しかったですね」
「そうだった、そうした戦車にだけ対するよりも」
 幾ら戦力として衝撃的であってもというのだ。
「バランスの取れた性能の戦車を多く配備する方がな」
「いいですね」
「合理的ですね」
「そうなりますね」
「そうだ、その方がだ」
 むしろというのだ。
「合理的だ」
「そうなりますね」
「実際我々もM103は失敗したと言えますし」
「数の少ない特別な車両に対するより」
「全体を考えるべきですね」
「そう思うとシャーマンはよかった」
 大戦中のアメリカ軍の戦車はというのだ。
「あの戦車はな」
「はい、バランスの取れた性能で」
「非常によかったですね」
「乗員の負担も少なく」
「長く戦えました」
「ああした兵器が一番いい」
 戦車に限らずというのだ。
「やはりな、兵器はバランスと数だ」
「そして使う者に負担が少ない」
「そうしたことの方が大事ですね」
「巨大な砲や重装甲も大事ですが」
「それ以上にですね」
「バランスだ、そうしたものの方が大事だ」
 まさにと言うのだった、そしてだった。
 アメリカ軍はM60の量産化を進めそのうえでM1エイブラムズに至った、そして今に至る。それがアメリカ軍の戦車の歴史の一幕である。一度相手の重戦車に驚かされ自分達も開発したが結局それは彼等にとっては一時のことだった。今では歴史になっている話である。


恐ろしい戦車   完


                   2021・1・14
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