第四章
[8]前話
「というか私も小田切さん好きですから」
「恵美さんもなの」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「一緒に応援していきましょう」
「それじゃあ」
美代子は恵美の言葉に頷いた、そしてだった。
彼女の言葉に後押しされて小田切を応援していった、その中で。
自分のスマートフォンの待ち受けに彼の画像をセットしてまた彼のファンクラブに入ってアプリも使って情報を集めてだった。
末の孫にだ、笑顔でこんなことを言った。
「今度皆で映画を観に行く?」
「映画?」
「そう、小田切さんの映画をね」
彼が主演のそれをというのだ。
「そうしない?」
「映画なんだ」
「そう、行きたい人は皆でね」
こう仁康に話した。
「どう?」
「それで誰が出てる映画なの?」
「お祖母ちゃんが好きな人が出てる映画よ」
まさに彼が主演のというのだ。
「それよ」
「お祖母ちゃんも好きな人がいるんだ」
「そうよ、結婚はしないけれど」
それでもというのだ。
「その人が好きだからね」
「そうなんだ、じゃあ一緒に行こう」
孫は祖母に笑顔で応えた。
「それでお祖母ちゃんが好きな人を観ようね」
「ええ、皆でね」
美代子はにこりと笑って答えた、そしてだった。
孫達を連れて映画館に行ったが彼女が一番うきうきしていて孫達に子供みたいだと笑って言われた、だが彼女は幸せだった。大好きな彼を銀幕で観られたので。
それで家に帰ってから恵美にこう言った。
「またあの映画を観に行くわ」
「そうされますか」
「とても素敵だったから」
その彼がというのだ。
「またね」
「そうですか、じゃあ行かれて下さい」
恵美も笑顔で言った。
「是非」
「そうするわね、これからどれだけ生きられるかわからないけれど」
「それでもですね」
「ずっとあの人を好きでいて応援するわ」
恵美ににこりと笑って答えた、その顔は完全に恋をしているものだった。そしてまた彼に会いに映画館に行くのだった。
姥桜 完
2020・12・14
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