第五章
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「お笑いは上品にやるよりも」
「下品か」
「そうしてやるのがな」
その方がというのだ。
「ええしな」
「その方が笑い取れるか」
「もう自分もな、実はピアノと茶道を中学までしてても」
実はそうなのだ、静は幼い頃からこの二つをやっていた。それでどちらもかなりのものである。
「それでもや」
「そういうのはか」
「お笑いの為にかやな」
「もういらん、ワイルドでいくんや」
「そういうことか」
「そや、俺等はどつき漫才やからな」
そうしたタイプの漫才だからだというのだ。
「それでええな」
「わかったわ、ほなな」
静は梅酒を飲んでから頷いた。
「これからもな」
「全力で来いや」
「そうさせてもらうわ」
或人に笑って返した、そして実際にだった。
静は彼に全力で突っ込みを入れていった、見てても痛いこれはかなりのものだと思われるまでに。そうしてだった。
日本で誰もが知っている漫才コンビにまでなった、そしてそのまま長い間活躍した。二人こそまさに本物の漫才だと言われて。そこには容赦のないものがあるとさえ。
そして或人は静と結婚して夫婦漫才になって子供も出来てからも彼女に言った。
「ええか、夫婦喧嘩みたいにな」
「思いきりやな」
「来い、実際俺等はそうした喧嘩せんけどな」
「実際は家やとあんたの方が上やしな」
何かと彼の方がしっかりしていてそうなっているのだ。
「そやけどな」
「プライベートはプライベートやな」
「それで漫才は漫才や」
「漫才は全力で笑わせる」
「その為にや」
「これからも全力やな」
「それで来い」
こう言って静に結婚してからも突っ込ませた、そして夫婦になっても笑いを取っていた。そこに全力の気迫を入れて。二人の漫才は何処までもそうして続いた。
ワイルド突っ込み 完
2020・12・13
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