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レーヴァティン
第百九十七話 小田原入城その六

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「考えておくことだ、いいな」
「わかりました」
「それではですね」
「下野に向かいつつも」
「何時何があってもおかしくない」
「そのことも念頭に置いておきます」
「その様にな」
 こう周囲に話して相模から武蔵に入り関東攻めの最重要拠点となっている江戸城に戻りそこから下野を攻めようとした、だが。
 江戸城に自身も兵達も入れるとすぐにだった。
 雨が降り出した、しかもそれは大雨だった。それで英雄は将帥達に江戸城の中で険しい声でこう言った。
「言ったらな」
「はい、まさにですね」
「その傍からですね」
「何かが起こりましたね」
「大雨となりましたね」
「それも関東全土でだ」
 江戸だけでなくというのだ。
「話を聞くとな」
「その様ですね」
「関東全土が大雨で」
「それで、ですね」
「軍勢の動きが止まっていますね」
「止めざるを得なくなっていますね」
「今は仕方ない」
 兵を動かせない状況はというのだ。
「この大雨ではな、そしてこの雨だと災害もな」
「有り得ますね」
「水害ですね」
「洪水も起こりかねないですね」
「大雨と共に」
「それも考えられる、戦よりもだ」
 これも重要だが、というのだ。
「しかしだ」
「それよりもですね」
「民を救うことですね」
「水害が起これば」
「それが大事ですね」
「江戸は堤は整えられていて武蔵のかなりの部分もだが」
 それでもとだ、英雄は話した。
「しかしだ」
「それでもですね」
「西国と比べると落ちますね」
「それは関東の他の国なら余計ですね」
「そうなっていますね」
「西国は幕府の領地になっていて幕府がその力を注いでいた」
 堤を整えることについてもというのだ。
「堤も橋もな」
「だから災害もかなり抑えられていますが」
「関東は違いますね」
「国人や領主それぞれが行っていて」
「それで、ですね」
「整えられてはいても」
「西国よりはかなり落ちますね」
「政は戦の後で本格的に整えるつもりだが」 
 それでもというのだ。
「災害が起こればな」
「その時はですね」
「民を救い」
「そして堤もですか」
「そちらを整えますか」
「民を救えずして世界を救うなぞだ」
 到底とだ、英雄は言い切った。
「出来る筈がない」
「だからですね」
「我々はですね」
「この大雨で民が困れば」
「戦は中断し」
「そしてですね」
「民を救う、戦は後でも出来る」
 今の状況ではだ、幕府はもう関東の下野と常陸以外は掌握しまた大きな敵の脅威も間近に迫っていないからだ。
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