第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第一節 救出 第五話(通算85話)
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エマのG01にカミーユのG03が続く。漆黒の宇宙に飛ぶ、二つの紺碧の機体は、闇色に染められて互いの機体すら視認できない。辛うじて噴き出されるスラスター光と敵味方識別信号だけが頼りであった。
エマは舌を巻いていた。カミーユの操縦技術は予想を遥かに超え、まるでエマの思考をトレースしたかのような動きをしていたからだ。
「なんて子なの……!」
エマとてティターンズに選ばれたエリートである自負があった。だが、明らかにカミーユは自分の上を行っていると思える。まだ軍に入って間もない新兵であるにも関わらず、だ。それはまるで、話に聞くニュータイプのようだった。
「まるで……?」
口を衝いて出た言葉に驚きを隠せない。
ニュータイプ。
人の革新による認識力の拡大による物事を正確に理解し合える人々。ジオン・ズム・ダイクンが語った人類の次なる進化はその姿ではなく、精神にあるとされている。その存在はダイクンの忌んだ戦争の最中に、唐突に現れた。認識力を洞察力として発現し、恐るべき兵器の扱い手となり、連邦とジオン双方にエースとして燦然たる戦果を築いた。エマはそのニュータイプと呼ばれた人間に会ったことがある。戦場ではなく、連邦軍士官学校の研修でのことだ。
カミーユから感じる肌を刺すような感覚――プレッシャーとか殺気のようなものは、その人物からは感じなかった。そう、シャイアンの空軍基地で会ったアムロ・レイはエマにとって普通の人――ジオン・ダイクンのいうオールドタイプと変わりがなかった。
「だからといって……」
否定する気はない。
アムロ・レイとカミーユ・ビダンは違う人間であり、仮に二人ともニュータイプだったとしても、全く同じであると思うのは間違いではないか。同じ親から生まれた兄弟ですら違う人生を歩む。他人であるならなおさらだ。エマの見るところ、アムロ・レイは内向的であり、カミーユ・ビダンは外向的である。性格も違うのだから、発現の仕方が違っても不思議はない。自分が感じたことは感じたままでいい。否定からはなにも生まれない。
それに今はそれどころではなかった。優先すべきは救出作戦である。頭を振って思考の迷宮を追い出して、コンソールのカウントダウンタイマーを見た。
「十五、十四……九、八、七……零!」
作戦スタートだ。
右手の甲についているマルチプルランチャーから発光弾を打ち上げ、スロットルペダルを目一杯踏み込む。ムーバブルフレームを通じてバックバックに備わる四基のメインスラスターがエマの挙動に合わせて全開になった。
エマの上げた発光信号が赤から青に変わる。赤は撤退信号だ。規則的に明滅し、《アレキサンドリア》に自分の帰艦を知らせる。青は、《ガンダム》再奪取成功を報せる合図である。こ
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