外伝〜彷徨える霊姫〜 後篇
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〜月の僧院・最奥〜
「……っ。」
「予想通り、最奥でご対面か。だが………」
「先程対面した時と比べると随分と鬼気迫る表情を浮かべていますね。」
アンリエット達と対峙したフォルデとステラは鬼気迫る表情を浮かべたアンリエットを警戒した。
「――――――アンリエット。僧院内の死霊達は排除した。後は君とその周囲の死霊達だけだが…………」
そしてリィンがアンリエットに声をかけたその時
「……返して……」
アンリエットの口から絞り出すような声がその場に響く。
「”返す”………?わたくし達は貴女から何も奪っていませんが……」
アンリエットの言葉を聞いたアルフィンは戸惑いの表情でアンリエットを見つめて指摘した。
「ここは新たなる『怨恨の谷』となった場所……夢を見た人間族が足を踏み入れ、やがて絶望に囚われる場所……どこにも辿り着けず、どこにも逃れられない、命を落とした後も死霊となって彷徨い続ける。」
そこまで語ったアンリエットはぐっと唇を引き締める。
「わたしは死霊、わたしには、彼ら彼女らを浄化することなどできやしない……でも、それでも良かった。どうにもならない世界を嘆き、叶う希望のない願いを胸に秘め、慰めの言葉を放つ日常が好きだった。変化のない時を過ごす事は苦痛ではなく、何も変わらない彼ら彼女らと谷底に棲まい、ずっとずっと、互いを慰めながら漂い続ける……例えその場所が変わろうとも、それが続く平穏を望んでた。」
本当に悲しそうに、震えるような声色で願望を口にする。
「あなたさまが来なければ、平穏は保たれていたのに。あなたさまが乱さなければ、この僧院はたくさんの死霊で溢れていたのに。あなたさまが抵抗しなければ、あなたさまも死霊になって一緒にいられたのに……!!返して――――――あの穏やかに過ぎていった平穏な時を返して!」
「アンリエット、貴女は………」
「死霊……たくさん……増え続ける……みんな、一緒にいる……アンリエットにとっての……幸せ……」
「……それが貴女の”本性”ね。他者を案ずるふりをして引きずりこみ、死霊へと変えて自らの欲望を満たす。そうやって先程口にした『怨恨の谷』とやらは死霊の楽園と化し続けていたのでしょうね。」
「……ある意味、怨霊である彼女らしいわね。」
涙を流しながら語るアンリエットの話を聞いてアンリエットの”本性”を悟ったリタは複雑そうな表情を浮かべ、ナベリウスは静かな表情で呟き、ロカは厳しい表情でアンリエットを睨みながら推測を口にし、サティアは静かな表情で答えた。
「……かえ、して……!」
(クク、我らがこの僧院内にいた怨霊達を掃討した事であの霊姫は我らへの恨みの感情に囚われているよ
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