第108話 難楼 中編
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者もいるのです。あなた様が彼らを辱める気がないと言っても、最早、彼女達は戻る場所等ございません」
「彼女達は折を見て返す。それでいいだろう」
「劉将軍の奥方が敵将の奴隷として送られた後、仮にあなた様の元に戻って、以前通りに愛すことができますか?」
無臣は私を睨み言いました。
彼女の言わんとするとは分かります。
私は十人でいいと言いましたが、難楼側が千人の女を献上してきました。
これを難楼の責任だと断ずるのは容易いですが、難楼にそうさせた私にも責任があります。
「では、お前はあの時、難楼達を虐殺すれば良かったと言うのか?」
「そのようなことは申しておりません! 私はただ、あなた様ならもっと良い手だてを探すことが出来たのでは思っているだけです」
無臣は私に感情を露にして声を上げました。
「無臣、私は神ではない。そもそも神であれば、態々、難楼を武力で制する必要など無い」
私は無臣を厳しい表情に見ると、話を続けました。
「私の権力で強権を発動し、難楼達を救った場合、その後の烏桓族はどうなったと思う。彼らは図に乗り、幽州の民への無法を止めなかっただろう。私に対し日和見を示した者、明らかに反意を示す者等は私をどう思う。結果は私がこの幽州に来る前と何も変わらない。幽州の民と烏桓族の復讐の連鎖が続くのみ。そんな下らない争いなど何も生まない。この地は田畑は荒れ、人心は乱れ、この地に住まう民は心を安らぐ日々は夢のまた夢だ。そんなことのために私は多くの敵兵と味方の兵の命を奪っている訳でない! 私が望むのは漢人と烏桓族の争いを止めさせ、共に力を合わせ生きる道を模索することだ。そのためなら、私は幾らでも汚名を被るつもりでいる」
私は自分の本心を包み隠さず無臣に言いました。
「お前とて出世を望むのは烏桓族達の生活をより良くしたいからではないのか? それなら、司馬の官位を受けよ。兵卒のままでは私に諫言することも叶わないのだぞ。そして、この私に不満があるなら、良策を私に献策せよ。お前は今、この私に献策できる地位につける機会を見す見す手放そうとしているのだぞ。今のお前は愚者でしかない。私に献策できる地位を望めるにも関わらず、私を批判するのみではないか。それがお前の望んだことなのか?」
私は無臣にもう一度、司馬の官位を受けるように諭しました。
烏桓族の地位を向上させるには、無臣のように官職につけるようにすることです。
ただし、それは同情にて行うのではなく、彼らの力で勝ち取らなければいけないと思います。
私は彼らが結果を出せば、その機会を惜しみなく与えるつもりです。
それによって漢人と烏桓族の争いが起こるかもしれません。
それでも実行するしかないと思います。
私の代で成し
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