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背中を見せて寝ること
第一章
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                背中を見せて寝ること
 国崎洋介は今自分のケージの中で丸くなっているふわりを見ていた、仕事から帰ってご飯を食べて風呂に入ってビールを飲みつつそうしている。
 そうしつつだ、彼は母に言った。
「ふわりよく寝てるな」
「ええ、今日もね」 
 母はケージの中のクッションの上で寝ているふわりを見つつ息子に答えた。
「よく遊んでよくお散歩してね」
「よく食ってだな」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「今はね」
「よく寝てるんだな」
「犬はよく寝るっていうけれど」
「やっぱり身体動かして食ったらか」
「それだけね」
「よく寝るか」
「そうみたいね、ケージ開けていても」
 見れば扉は開けっぱなしである。
「出て来てと言わないと出ないし」
「決まった時間に出てか」
「それで決まった時間に戻るし帰りなさいって言ってもね」
「帰るんだな」
「いい娘よ」
「だよな、しかしな」
 ここで息子はふわりを見てこうも言った。
「ふわりっていつも丸くなって寝てるな」
「犬の寝方ね」
「こっちに顔を向けてな」
 見れば実際にそうして寝ている。目を閉じて気持ちよさそうにそうしている。
「そうしてるよな」
「気持ちよさそうにね」
「何よりだな」
 洋介はこのことを素直に喜んで述べた。
「家族だしな」
「気持ちよく寝てくれたらね」
「一番いいよ」
「お母さんもそう思うわ」
「もう二度と悲しい思いをしない様に」
「大切に育てていきましょう」
「家族としてな」
 二人でこうした話をした、そのふわりを見て。
 だが風呂からあがった父はそのふわりを見てこう言った。
「まだな」
「まだ?」
「まだってなんだよ」
 妻も息子も父に問うた。
「一体」
「どうしたの?」
「いや、背中を向けて寝てないな」
 こう二人に返した。
「そうしてないな」
「背中向けたら何かあるのかよ」
 息子は父に怪訝な顔になって問うた。
「一体」
「ある、まあその時に言うからな」
「ふわりが背中向けて寝たらか」
「その時にな」
 そうするというのだ。
「またな」
「そうなんだな」
「ああ、あいつ等にはそうしただろうけれど」
「前の飼い主達か」
「あいつ等にはな」
 ふわりを捨てた彼等にはというのだ。
「ふわりは本当に懐いていたしな」
「俺達にも結構懐いてきただろ」
 息子は自分とは違い風呂上りには牛乳を飲んでいる父に言った。
「そうだろ」
「あいつ等よりはまだな」
「懐かれていないか」
「ああ、あんな連中よりも懐かれてないことはな」
 ふわりを捨てた彼等よりというのだ。
「残念だな」
「ふわりをおもちゃにしか思ってなかった連中よりはか」
「屑よりも落ち
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