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レーヴァティン
第百九十六話 鎌倉入りその十四
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「若し知らないならな」
「しくじる」
「そうなってしまいますね」
「治める国を知らねば」
「左様ですね」
「上手くいく筈がない」
 治めるその国を知らずしてというのだ、英雄は飲みつつも酔っておらずそのうえで冷静な口調で話していった。
「どれだけ気高い考えがあろうともだ」
「その国を知らねば」
「その政は上手くいかない」
「だからですね」
「まずはですね」
「その国をよく知ることだ、この牛は幕府の治める国々の牧場の牛達だが」
 肉牛達の肉である。
「どうだ」
「はい、美味いです」
「それも実に」
「よい肉です」
「そうだな、これは伊勢の牛だ」
 この国の産だというのだ。
「松阪のな」
「伊勢のあの地の牛ですか」
「我等はその牛の肉を食していますか」
「そうですか」
「その牛を食うとだ」
 今そうすればというのだ。
「松阪のこともわかるな」
「よい牛の肉である」
「その牛を育てているならですね」
「松阪はよい牛を出せる地である」
「そのことがわかりますね」
「そして働いている者達も励んでいる」
 その仕事にというのだ。
「よい牛を作れる位にな」
「左様ですね」
「そのこともわかりますね」
「ただ美味いだけでなく」
「そこからもわかりますね」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「我々もだ」
「よく知るべきですね」
「その国のことを」
「飲み食うことからも」
「そうすべきですね」
「そういうことだ、若し土地が悪く民が苦しいなら」
 そうした国ならというのだ。
「米も酒も他のものもな」
「まずくなりますね」
「どうしても」
「そうなりますね」
「痩せた土地の野菜はまずい」
 英雄は葱を食べつつ言った。
「どうしてもな」
「左様ですね」
「痩せた土地で作ってもです」
「野菜はまずいです」
「芋にしてもです」
「やはりよい土地の様が美味いです」
「馬鈴薯や薩摩芋は痩せた土地でも出来るがな」
 このことは事実でもというのだ。
「しかしな」
「それでもですね」
「やはりよい土地の方が美味いですね」
「それが事実ですね」
「美味いものを作らせて食うにはな」
 その為にはというと。
「いい国にすることでだ」
「その為にはですね」
「その国のものを食い」
「そして酒を飲む」
「それも政であるのですね」
「そうだ、では楽しみながらだ」
 地層と酒をというのだ。
「そうしてな」
「政を行い」
「そして戦もですね」
「そうしていきますね」
「これからな」
 こう言って実際にだった。
 英雄は相模の酒も飲んだ、その酒もまた美味く彼はその味に堪能さえしてそのうえで夜を過ごしていった。


第百九十六話   完



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