暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第73話:その名は旗頭に非ず
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わね」

 目の前でケージを横取りされ、透が仮面の奥で歯噛みする。その彼の背後で、海中から潜水艦が浮上してきた。二課が仮設本部として使用している移動司令部である。

 体勢を立て直すべく、透は少し下がり潜水艦の甲板上に着地する。奏と翼を同時に相手取ったマリアを相手に、無策で勝負を挑むのは危険だ。

 透が甲板上で呼吸を整えていると、彼のすぐ隣にハリケーンスタイルとなった颯人がやって来た。見たところ彼もそれなりに消耗しているらしく、着地するなりその場に膝をついた。

『颯人、大丈夫か!?』
「あぁ、なんとかな。さっきチョイヤバかったけど……ふぅ」

 彼が姿を現した事に、奏が通信機越しに心配して声を掛ける。彼は何でも無いと言いたげに答えるが、奏の負担を突然請け負ったのはやはりきつかったらしく、その様子からはあまり余裕が感じられない。

 問題はそれだけではなかった。先程の通信で、颯人は魔法使いと交戦中との事だった筈だ。その彼がここに居るという事は、つまり…………。

「あの野郎、いきなりどっかに飛んで行ったかと思えばよぉ……」

 彼の視線の先では、ライドスクレイパーの上に両足で立ってマリアの隣に並ぶソーサラーの姿があった。先程の魔法はやはりアイツだったのだ。

 立ち塞がるマリアとソーサラーを前に、構えを取る颯人と透の2人。

 その様子を桟橋から見ていたウェル博士が、後ろ手に縛られながら口を開いた。

「時間通りですよフィーネ、ソーサラー」
「フィーネだとッ!?」

 ウェル博士の声に真っ先にクリスが反応した。クリスの場合は特にそうだろう。何しろ利用されていたとは言え、彼女に世話になっていたのは間違いないのだから。

「終わりを意味する名は、我々組織の象徴であり、彼女の二つ名でもある」
「まさか……じゃあ、あの人が……」

「新たに目覚めし、再誕したフィーネですッ!!」

 ウェル博士の言葉に、奏達はマリアを愕然とならずにはいられなかった。

 フィーネと称されしマリアは、夜明けの逆光の中その目を開き、颯人と透を見据える。
 その彼女を庇う様に、ソーサラーがライドスクレイパーの上に立ちながらマリアの前に出てマントを広げながら片手を上げた。

 その姿はまるで姫君を守る騎士の様ですらあった。

 2人の様子に颯人は思わず鼻を鳴らした。

「カッ、気取っちゃってさぁ」
『颯人! 今ウェルの奴が、マリアは再誕したフィーネだって――』
「聞こえてるよ。さてそれは何処まで本当なのかねぇ?」

 どうにも颯人には、あのマリアがフィーネとはどうしても思えないのだ。幾ら何でも復活が早すぎるし、何より行動があのフィーネに通じているとはどうしても思えない。

 颯人が疑問を抱く中、
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