暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第73話:その名は旗頭に非ず
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「期待通り、来てくれましたね。では、お持て成しといきましょう」

 そう言ってウェル博士がコンソールのエンターキーを押す。すると廃病院内の廊下に、赤いガスが散布され始めた。薄暗い廊下な上に、無味無臭のそのガスは、例え色が付いていても認識は困難であった。

 奏達は散布されたガスに気付かず、どんどん院内を進んで行く。

 事態が自分の掌の上で転がりつつあるのを確信し、ほくそ笑むウェル博士。だが彼の目が院外を歩く颯人に向いた時、その視線は鋭くなった。
 この場で唯一彼の思惑から外れた動きをした颯人。彼の存在は厄介だった。

 厄介者は、早々に片付けるに限る。

 ウェル博士はパチンと指を鳴らした。するとどこに控えていたのか、彼の傍にソーサラーが姿を現した。

「外に居る魔法使いをお願いします。始末してくれて構いません」

 ソーサラーはウェル博士の指示に返事を返す事無く、その場を後にした。無言でその場を離れたソーサラーに対し、ウェル博士は特に気分を害した様子も無くモニターの向こうの奏達へと視線を戻す。

「くくく……さぁ、たっぷりとご馳走しますよッ!」




***




 一方廃病院内を進む奏達は、周囲を警戒しながら廊下を歩いていた。敵にはノイズだけでなく魔法使いも居る可能性があるのだ。慎重に行動するに越した事は無い。

「やっぱり、元病院ってのが雰囲気出してますよね……」
「なんだ? ビビってるのか?」
「そうじゃないけど、何だか空気が重いような気がして……」

 不安げな響をクリスが冷やかす。普段振り回される事が多いので、ここぞとばかりにマウントを取りたいようだ。

 しかしそうは問屋が卸さなかった。

「ん〜、確かに響の言う通り。何か出てもおかしくない雰囲気だよなぁ」
「何かって?」
「決まってんだろ? オ・バ・ケ」

 奏が両手を胸の前でだらりと下げ、よくある幽霊のポーズをとる。クリスはそれを鼻で笑った。

「ハッ! 馬鹿馬鹿しい。んなもん出る訳ねえだろうが」
「いやここ、マジで出るって噂らしいぞ? 聞いたところによると、まだ病院として成り立ってた頃医療ミスどころか院長が事故に見せかけて患者殺したりして、その時に死んだ患者が化けて出るって噂が――――」

 直後、一行のすぐ近くにある放置されていた鉄パイプが倒れて派手な音を立てた。けたたましい音が廊下に響いた瞬間、クリスがすぐ近くに居た透の腕に抱き着いた。

「ヒャァッ!?」

 奏の話でちょっぴりそう言う雰囲気になって来たところでこんな事が起こったので、先程までの強気な様子も何処へやら、クリスは心底ビビった様子で透に抱き着いていた。怯えた様子の彼女を、透が優しく撫でて落ち着かせる。

 あれだ
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