リモート会議
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「確かめようがない限り、様子を見るしかないでしょう」
『…戻るか』
電話を切り、俺達はZOOMに戻った。
ZOOMの画面には、14の困惑も露わな顔と、三沢とマッチョが映る。主任はまだログインしていない。
『あー、あの…主任が来る前にひとつ』
右端の顔が口火を切った。三沢を除く全員の肩に緊張が走る。
『例の資料は、どの辺まで仕上がってますか?』
……なんだ、普通に仕事の話かよ。全員の肩から緊張が抜けた。俺もそっと息を吐いた。左下の奴が頷く。
『ああ、仕上がってるよ、仕上がってる』
ぶわぁ、と、三沢んとこのマッチョが胸筋を開くようにポーズを取った。また全員に緊張が走る。俺は急いでLINEの画面を開き、江口先輩にLINEを送る。
『反応しましたよ』
『資料に反応したのか?』
『いや?資料に、というよりは』
―――仕上がっている、というワードに。
『…おい、ちょっとお前、もう一回畳みかけてみろ』
『俺すか!?』
『はやくやれ』
「んー、仕上がってますね、すごい仕上がってる」
マッチョのポーズが変わった。斜めに構えて胸筋と上腕の筋肉を見せつけるようなポーズだ。そして異様に白い歯を剥いて、二カッと笑った。
『笑ったーーー!!』
『やっぱりこれだーーー!!』
『あいつ筋肉への称賛を欲していますよ!!』
ボディビルの大会で、ある種の掛け声をかけることによって場を盛り上げる、というのを聞いた事がある。
「仕上がってるよ!」だとか
「でかい!!」だとか
「大胸筋が歩いてる!!」
だとかいうやつだ。
奴が夢半ばに散ったボディビルダーの霊なのか、実在の変質者なのかはさておき、一つ分かったことがある。
奴の目的だ。
ZOOMに参加する全員が、そのことに気が付いたらしい。奴らはそっと周りを見渡すと、発言のきっかけを探し始めた。
「すごいデカい!もうデカい資料だな!」
「それでいて無駄がない。ここまで絞るには、眠れぬ夜もあったろうに!!」
「…それにしても…あれだな!肩凝ったな…肩メロン!肩メロンだなこれは!!」
いや最後のは無理があったきがするが…奴らが発言するたびに、マッチョはポーズを少しずつ切り替えて生き生きと歯を剥いて笑う。
「こんな資料もありますよ…はい、ドーーーン!!」
「デカい!デカすぎて固定資産税かかりそうだな!!」
「チョモランマ!!」
「ちょ…どうしたんですか?みんなさっきから変ですよ?」
三沢が明らかに変化した場の空気に戸惑い、眉を寄せた。お前、この場の空気を読む能力があるのなら、自分の周りを取り巻く異様な空気を少しは読み取れ。お前の真後ろでマッチョが歯を剥いて笑ってんだぞ。
「いや、なんでもない。資料の話を、そのな」
江口先輩が咄嗟に誤魔化す。三沢
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