リモート会議
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危害を加えることではないと思うんです」
『はぁ?何で云い切れる?』
「俺達からマッチョ丸見えなように、マッチョからも俺達が丸見えだと思うんです。つまり」
危害を加えるには、目撃者が多すぎるんですよ。…口にしながら考えていた。なら、目的は?
『…なあ、あのマッチョってさ』
「はい?」
江口先輩が声のトーンを落とした。
『全員に、見えてると思う…?』
「え?そりゃ…」
―――まて江口先輩。あんた何を云おうとしている。
「実際確認はしてないですが…え、あれ、全員に見えてますよね…?幽霊ではない、ですよねぇ…?」
やばい俺も自信がなくなってきた。いくらなんでもあんな生命力に溢れた幽霊がいる筈は…。しかしそれなら何で三沢はあれ程の存在感を放つマッチョが真後ろにいるのに気が付かないんだ?イヤホンだけで説明つくか?わざわざマッチョを配置しての冗談的なものかとも思ったが、三沢は同期で一番真面目な男だ。そんな冗談を思いつくような男では……。
「あぁ、すみません…俺もう何が何だかわからなくなってきました。もう考えるの怠くなってきたんで…部屋に戻っていいっすか?」
『おいやめろ、俺を一人にするな!』
「でもそろそろ会議開始時間ですよ。主任がログインしてるかも」
『大丈夫だ、主任ならまだ悪戦苦闘している』
「悪戦苦闘?あの人出社してんですか」
『…いや、ZOOMに慣れてないんだあの人』
「ええ!?ZOOM会議もう4回目ですよ!?今までどうやってログインしてたんですか?」
『娘さんがログインまでやってくれてたのが、今日は居ない。彼氏とデートだそうだ』
「そりゃダブルショックですね」
『さっきまで俺がLINEでやり取りしてログインのしかたを教えてたんだけど実は…さっきから未読無視している。これでもうしばらくは時間が稼げるな』
「あんた鬼ですか」
『いいから主任がログインするまでに何とかするぞ。あの人絶対、マッチョに反応して騒ぐからな。まずはどういう状況なのか、考えられる候補をあげていくぞ』
考えられる候補は、こうか?
1・マッチョは幽霊で、三沢には見えていない
2・マッチョは生身で、三沢は気が付いていない
3・マッチョを使った三沢の悪戯
4・三沢はこの状況に違和感を持っていない
「…てとこですかね」
『1は困るな…俺達じゃどうにもならないぜ』
「田所先輩って寺の息子じゃないですか?」
『寺の息子は全員霊能力者と思うなよ!?あいつんち、物凄い生臭だからな』
「3と4ならスルーでオッケーなんですけど」
『問題は、2の場合だな』
三沢の自宅に生身のマッチョが侵入し、それに気が付いていない三沢。マッチョの方は、俺達を視認しているという。
『…あるかなぁ、そんな状況』
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