第二章
[8]前話
夫婦は笑顔になって話した。
「ベイダーもそうだったけれどな」
「この子もね」
「ちゃんと色々教えてもらって」
「成長しているわね」
「ああ、ベイダーもそう思うな」
「ニャン」
雄であった、そして。
二人の傍で丸くなっていたが言われてそうだという感じで鳴いて応えた。夫婦はその彼を見ながら笑顔でさらに話した。
「モヒートは立派な子だ」
「本当にそうよね」
「障害のある子を育てることは大変だ」
「人間だってね」
「耳が聞こえなくてな」
「脳神経にダメージがあって」
「そうした子はな」
現実としてというのだ。
「どうしてもな」
「育てるのもね」
「苦労がある」
「そうよね、それで嫌になったり諦めたり」
「そうしたことになる場合もある」
「残念なことに」
「けれどモヒートは違う」
今は丸くなって眠っているスカイウォーカーの傍で横になっている、そのうえで彼を優しい目で見ている。
「この娘はな」
「セラピー犬ということを抜いても」
「それでもな」
「凄くいい娘よ」
「絶対に怒らなくてな」
「根気よく優しく教えてくれるから」
「本当にいい娘だ」
こう言うのだった。
「この娘がいてくれているから」
「だからね」
「スカイウォーカーも育ててくれている」
「それも愛情を以て」
「この子は指が多い」
夫はここでスカイウォーカーの多指症のことも話した、見れば指はそのままだ。
「幸福の証があるんだ」
「合衆国ではそう考えられてるわね」
「嫌う人もいるけれどな」
「ええ、けれど私達はね」
「そう考えているからな」
猫の多指症は幸福の証だとだ。
「だからスカイウォーカーはな」
「幸せになる為に生まれてきたわね」
「そうだ、だからな」
「モヒートに出会えて」
「これからもだ」
「幸せになるわね」
「今以上にな、障害があっても」
このことは事実だがというのだ。
「きっとな」
「これからもっと幸せになるわ」
「僕達がいて何よりもこんないいお母さんがいるんだからな」
モヒートを見て言った。
「ニャア」
「ナア」
「ワン」
何時しかベイダーも彼女のところに来ていたがモヒートはその彼も優しい目で受け入れた。スカイウォーカーも同じだった。そして自分の傍で寝ている二匹の猫をその目でずっと見ていた。
セラピー犬の癒し 完
２０２１・３・２６
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