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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
☆彼女からあたしは、何を貰った?
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だにどこなのかも分からない最中

「そこが、ボクがいた場所だよ。」
「…!」

何も無い暗闇。
どこからか声が聞こえた。
聞いたことのある声…いや、この声は紛れもなく”あたし”のものだった。
つまり、

「アンタが…”菫”。」

振り返れば奴が、
あたしと瓜二つの姿のそいつは、にんまり笑って後ろに立っていた。

「そう、ボクが菫さ。君が幼い頃から貯めてきたエゴが自我を生した姿。それがボク。キミの、本来あるべき姿。」
「…。」

つまり、何が言いたいんだ。

「ねぇ、葵。突然なんだけどひとつ聞いていいかな?」
「何?」

こちらを覗き込むようにして彼女は近付いてくる。
ピリピリとした何かを感じるが…これは殺気だろうか?

「キミは、香子から何かもらったかな?」
「もらった…?」

もらった?
香子から何を?

「ボクは名前を貰った。唯一無二のかけがえのない”菫”って名前をね。それにね、今日拾った武器もボク用になんか色々してくれるって言ってたよ。」
「だから、何?」

自慢げに話す菫。
しかしそれがなんだと言うんだ。
けどそいつは心を見透かしているみたいに笑って、話を続けた。

「ねぇ、葵。それと比べてキミは香子からなにかもらったのかな?」
「…!」

もらった…もの、
そんなもの…一つもない。
香子から何かを授かったとか譲り受けたとか、そういったものは何も無い。
けど…こいつは…

「ここまで言えばもう分かるよね?香子は…紫式部っていうサーヴァントはどっちを大切にしてるのかってこと。」
「でも…香子は…」
「”あたし”と契約した?それはボクにでも言えることだよ。何せボクは”あたし”、”あたし”はボク。表裏一体の存在なんだから。」
「…。」

何も、言えなくなった。
すると菫は踵を返し、こちらに背を向けるとどこかへと歩き出す。

「待て…!どこ行くんだよ!!」
「じゃあね葵。今度はキミの番だ。キミはそこで香子が滅茶苦茶にされるとこ、じっくり見てるんだよ。」
「待て!!おい!待て!!!」

叫んでも彼女は止まらない。
歩いても走っても、彼女との差は縮まるどころかどんどん開いていく。
止めようと手を伸ばしてもそれは空をつかみ、いずれ菫は消えてしまった。

「…。」

また、暗闇の中で1人になる。

「香子から…何かを貰った…?」

心の中で菫に言われたことが反響し、口から漏れる。
あいつの言う通りだ。あいつは名前を貰った。
けどあたしは…なんだ?
源 葵は…紫式部のなんなんだ?
分からない。どうしていいか、どうするべきか、
あたしには何もわからなかった。


?


それから、
尾頭邸にて夕飯までご馳走にな
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