チノへのプレゼント
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る皿を、赤い服を着た青年が見下ろしている。
半袖に薄い上着。クリスマスという季節には、ずいぶんと合わない服だった。
だが、婦人は青年のその服装を気にすることなく説明をしていた。
「はい。これは、亡くなった夫の遺品なんです。でも、私ももう故郷に帰ろうと思いまして。これは、他のどなたかの笑顔を作るために使われてくれればと思いまして」
「なるほどな」
青年は皿を持ち上げている。皿をぐるりと見まわす彼は、無精ひげが濃いなと可奈美は思った。
そして。
「つまり、これをぶっ壊せば、お前は絶望するんだな?」
キャッチ。
危なかった。割り込んだ可奈美は、青年が勢いよく投げ落とした皿を掴んでいたのだ。
「てめえ!」
「その声、やっと思い出した」
可奈美はそのまま、青年に蹴りを放つ。
青年は両腕を交差してガード。のけ反る。
「ああ、オレも思い出したぜ。お前、この前魔法使いと一緒にいやがった女だな?」
すると、青年の手から炎があふれ出す。青年がそれを打ち上げると、炎は上空で拡散。屋台を燃やし始める。
あちこちから起こる悲鳴。
「早く逃げて!」
可奈美は皿を持たせた婦人をそのまま逃がす。
クリスマスマーケットの人々は、すでに我先に逃げ始めている。
だが、青年は彼らに目もくれることなく、可奈美をじっと見つめている。
「面白れぇ。魔法使いだの青い野郎だのの前に、まずはてめえからだ」
そして、青年の顔に、不気味な文様が浮かび上がる。
それが起点となり、その姿が変わっていく。
それが、ファントムと呼ばれる怪人が本当の姿になる変異プロセスだということは知っている。
そして、以前倒したはずの敵の名前も。
「フェニックス……」
「さあ、楽しませてもらうぜ!」
炎の怪人、フェニックスは、大剣カタストロフを携え、可奈美へ足を進めた。
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