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レーヴァティン
第百九十六話 鎌倉入りその十

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「いいな」
「はい、では」
「あえて城の者達に見せましょう」
「我等の楽しみを」
「そうしましょう」
「ではな」 
 英雄は将帥達に言ってだった、早速楽しみだした。彼は小田原城を観つつ備えはしつつも兵達に享楽の時を過ごさせた。
 自らも馳走を食った、今宵の馳走はというと。
「すき焼きですか」
「今宵は牛鍋ですか」
「それを楽しまれますか」
「そうだ、俺はこれも好きでな」
 共に食う将帥達に鍋を前にして語った。
「それで食いたくなってだ」
「出させ」
「そうしてですね」
「我も相伴に」
「そういうことだ、だからだ」
 これよりというのだ。
「いいな」
「はい、それでは」
「これよりです」
「食させて頂きます」
「この鍋を」
「そうしろ、兵達にも食わせている」
 そのすき焼きをというのだ。
「もっとも肉は様々だがな」
「こうした身だけでなく」
「はらわたもですね」
「そちらも食いますね」
「これもだ」
 そのすき焼きもというのだ。
「食う、こちらの肉もいいしな」
「すき焼きの肉もですね」
「薄く切ったそれも」
「それで、ですか」
「今は楽しくですね」
「食っている、そしてその姿をだ」
 すき焼きを食うそれをというのだ。
「こうしてな」
「小田原に見せる」
「そこにいる者達に」
「そうしてですね」
「これ自体が敵に仕掛けていますね」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「思う存分食う、囲まれて戦に心を向けざるを得ない中でだ」
「こうして敵が楽しんでいるのを見ると」
「確かに挫けますね」
「そうなりますね」
「そうなる様に仕向けるのだ、それとだが」
 英雄はすき焼きを食いつつこうも言った。
「酒もだ」
「こちらもですね」
「飲むことですね」
「それも思う存分」
「そうしてですね」
「敵に見せますね」
「そうする、それも美味く飲め」
 ただ飲むだけでなくというのだ。
「敵に見せる為にな」
「左様ですね」
「では我等も飲みます」
「酔い潰れるまでに」
「その様にします」
「夜も昼も楽しみ」
 馳走に酒に宴をというのだ。
「歌舞の音をさせて遊ぶ声もだ」
「あえて出す」
「そうしていきますね」
「そしてそのうえで、ですね」
「敵に見せて」
「その心を乱しますね」
「そして噂を流すのだ」
 城の中にというのだ。
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