暁 〜小説投稿サイト〜
歪んだ世界の中で
第九話 決意を述べてその四
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「何でも好きなの言って。幾つでもね」
「幾つもいらないよ」
 千春はそのにこりとした笑顔で希望に返した。
「一つでいいよ」
「一つでいいんだね」
「希望の心がそこにあるから」
「僕の心があるから」
「そう。沢山いらないの」
 そうだというのだ。多くはいらないというのだ。
「一つに。希望の心があるから」
「それでなんだ」
「そう。だから一つでいいの」
「それなら。何がいいかな」
 その一つの何がいいかとだ。希望は千春にあらためて尋ねた。
「それだとね」
「ううんと。それだとね」
 どうかとだ。千春はそのUFOキャッチャーの中を見た。
 ガラスのケースのその中に多くのぬいぐるみがある。その中にだ。
 木のものがあった。人間に模していて目と黒い口がありだ。
 木が髪の毛になり枝が両手になっていた。そして根が足になっていた。
 その太く短い木の緑と茶色のぬいぐるみを見てだ。千春は希望に言った。
「これお願い」
「この木のぬいぐるみだね」
「うん、これでいいよ」
 こう笑顔で言うのだった。
「このぬいぐるみをお願い」
「わかったよ。じゃあね」
 そのぬいぐるみをだ。希望も見てだった。
 そしてそのうえでだ。UFOキャッチャーのハンドを操作してその木のぬいぐるみに向けた。その動きを見ながらだ。希望は笑顔で言ったのである。
「待っててね。すぐにね」
「捕ってくれるのね」
「そうするよ。けれどね」
「けれど?」
「落ち着いて」
 微笑んでだ。千春は希望にこの言葉を送った。
「そうして。落ち着いてね」
「落ち着いて捕ればいいんだね」
「そう。焦ったらかえって駄目だから」
 それ故にだと。希望に微笑んで告げたのである。
「落ち着いてね。リラックスしてね」
「気持ちを柔らかくしてだね」
「そうしていけばいいから」
「捕れるんだね」
「そう。だから落ち着いてリラックスして」
「わかったよ。実はかなり緊張してたけれど」
 実際に顔が強張っていた。そうなっていたのだ。しかしだ。千春のその言葉を受けてだ。
 希望は笑顔になりだ。こう言ったのだった。
「かなり。気が楽になったよ」
「じゃあ。頑張ってね」
「うん。リラックスしてね」
 そのうえでだと。希望は笑顔で言えた。
「頑張るよ」
「そうしてね」 
 こうしたやり取りをしてだ。そのうえでだ。
 実際にかなりリラックスしてだ。希望はそのハンドを操ってだ。
 木のぬいぐるみを取った。そしてそれを手に入れてだ。千春に手渡したのだった。
「はい、これだよね」
「うん、有り難う」
 満面の笑みでだ。千春はそのぬいぐるみ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ