第二章
[8]前話
「ニャア」
「ニャウ」
「ニャウン」
「ミャア」
「ナア」
「ナ〜〜オ」
「六匹共ね」
「無事にですか」
「生まれたわ、怪我をしていたけれど」
それでもというのだ。
「何とかね」
「皆無事にですか」
「生まれたわ」
「よかったですね」
「奇跡よ」
こうまで言った。
「本当にね」
「そうですね、よかったです」
成実もほっとした、そしてトリクシーは六匹の猫を育てていき。
「ニャア」
「ナア」
別の二匹の子猫も育てた、これには成実はさらに仰天した。
「自分の子供だけでなくですね」
「他の子猫達もね」
「育てていますね」
「立派な猫ですね」
「後ろ足が動かないのに」
「ミルクが出るから育てるなんてね」
「立派な猫ですね」
こう言うしかなかった。
「本当に」
「私もそう思うわ、この子は立派な子よ」
「はい、こうした子こそ幸せになるべきですね」
「そうなるべきよ」
是非にとだ、ゾーイは成実に答えた。そうしてだった。
子猫達自分の子ではない二匹も合わせて八匹の子猫は無事に育てられてだった。
それぞれ里親に貰われていった、どの里親の人達も心ある人達であり成実もゾーイもよかったと思った。
だがここでだった。
成実は残ったトリクシーを見てゾーイに尋ねた。
「この娘はどうなりますか?」
「一匹だけ残ったわね」
「はい、まさか殺処分なんて」
「それにはならないわ」
ゾーイは成実ににこりと笑って答えた。
「絶対にね」
「この施設の方針ですか?」
「実はここでもね、有り得るけれど」
ゾーイは少し残念な顔になって成実に答えた。
「けれどね」
「それでもですか」
「ならないわ、それはどうしてか」
その理由も話した。
「それは私が引き取るからよ」
「だからですか」
「そう、だからよ」
「トリクシーは助かるんですね」
「こんないい娘が不幸になることは許されないから」
そのトリクシーを見て成実に話し0た。
「だからね」
「これからはですか」
「トリクシーは私の家族よ、じゃあトリクシー今日から私の家が貴女のお家よ」
「ニャオン」
トリクシーも鳴いて応えた、そうしてだった。
トリクシーはゾーイの家に入って彼女の家族として暮らしはじめた、怪我に負けず子供達を育てそれぞれの幸せの場所に送った母猫は今度は自分が幸せになった。成実はそのゾーイとトリクシーを見て心からの笑顔を浮かべた。
障害に負けなかったお母さん猫 完
2021・3・24
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