第八話 友情もその十三
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「とても。ですからそれは」
「そうだね。けれどね」
「それでもですか」
「お金とかはアルバイトで稼ぐよ」
「そうしてでもなんですね」
「僕はもうあの家から出たいんだ」
悲しい決意だった。その決意と共にだ。
希望は俯いたままだ。真人に述べたのだった。
「あの家にこれ以上いてもね」
「嫌になるだけだから」
「うん。だから」
それ故にだというのだ。
「あの家にはもういたくないんだ」
「大変ですがそれでも」
「大変でもいいよ」
もうだ。そのことすら気にならないまでにだ。希望は家、家族について嫌悪を覚えていた。彼にはもう家族に対する愛情はなかった。最初からほぼなかったが。
「それでもね」
「そうですか。僕としてはです」
「一人暮らしには反対なんだ」
「高校のこともありますから」
「それでもいいよ。あの家にいるよりは」
「ではです」
希望が家を出る決意が強いのを見てだ。それでだった。
真人はそれはいいとしてだ。そのうえで彼に言ったのである。
「一つ提案があります」
「提案?」
「大叔母さんおられますね」
希望が唯一慕う肉親であるだ。彼女のことを話したのである。
「遠井君をいつも大事にしてくれる」
「おばちゃんだね」
「あの人のところに行かれてはどうでしょうか」
「おばちゃんのところに」
「あの人が遠井君を受け入れてくれればですが」
「うん、それは大丈夫だよ」
大叔母ならばだ。そうだというのだ。
「絶対にね。断ることなんてしないよ」
「そうですか」
「おばちゃんはそうした人じゃないよ」
絶対の信頼を。真人や千春に対するそれをだ。希望はその人にも抱いていた。
そしてそれ故にだ。こう言えたのである。
「僕の家族のことも知ってるから」
「では」
「その方がいいかな」
腕を組み考える顔になってだ。希望は述べた。
「やっぱり」
「一人で暮らされるよりは。家賃や食費のこともありますし」
「それにガス代や水道代も」
「一人暮らしはお金がかかります」
真人はその現実を述べた。それだけだがそこに含まれているものは切実なものだった。
「ですから。それはです」
「しない方がいいんだね」
「僕はそう思います。ですから」
「家を出ても」
「はい、一人暮らしは止めておきましょう」
こう希望に言うのだった。くれぐれもといった口調で。
「今はその分学業やスポーツに励まれた方がです」
「いいんだね」
「そう思います」
この考えも希望に告げた真人だった。
「ですから本当に」
「それがいいかな」
「成績を上げて。痩せたいのですよね」
「も
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