第二章
[8]前話
「これが自然だから」
「仕方ないですね」
「そう、子供が食べられることもね」
「よくあることですね」
「だから見ていよう」
「それが自然を守ることです」
リサもこう言ってだった。
二人は見るだけだった、ライオンも生きる必要がありそれを邪魔することは生態系に影響を及ぼすことだからだ。
だから今は見ていたが。
ライオンは怯えているヒヒの子供に何もしなかった、それどころかだった。
「何か自分の傍に置きましたね」
「そうだね」
シラーはそれを見つつリサに応えた。
「何もしないどころか」
「自分の胸の前に置きましたね」
「完全に護っているね」
「他のライオンが来ても」
見れば雄ライオンが来たがそのライオンに軽くうなった。
「ガルル」
「ガルッ」
雄ライオンはわかったという顔になって去った、そして。
これまで木の上にいたらしい成体のヒヒ、子供の親か近い者と思われるヒヒが来てだった。
「キキッ」
「キッ」
子供を素早く抱えたが。
雌ライオンは何もしなかった、それどころかヒヒに行けという様な目を向けてだった。
成体のヒヒが子供を連れて行くのを見守った、そしてヒヒ達が去ると自分もその場を去った、その光景を見てだった。
リサはシラーに言った。
「満腹したからですね」
「もうそれ以上は食べなくてだよ」
「そうしてですね」
「後は力のない子供を守ったんだ」
「そうですね」
「野生の動物は狩るけれどそれ以上の命は奪わない」
「あくまで生きる為です」
その為に他の命を犠牲にするというのだ。
「それだけですね」
「そう、だからね」
「あのライオンの様な行動を取る場合もありますね」
「そうだね、さっきの光景も写真に撮ったし」
「このお話も広めるべきですね」
「いい話だからね」
野生の動物の一面を語れるそれだというのだ。
「そうしよう」
「はい、それじゃあ」
「他の場所に行って写真を撮ろう」
こう言ってだった。
シラーはリサと共に別の場所に行った、そうしてだった。
また写真を撮りかつこの話を広めた、野生の世界にいる動物は必要以上に命を奪わず時として種族を越えた優しさも見せる。そのことを伝えたのだった。ボツワナの野生の世界で実際に起こったことである。
満腹だからもうこれ以上は 完
2021・3・21
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