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戦国異伝供書
第百二十八話 僧籍の婚姻その十五

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「だから織田家も欲しいであろう」
「ですな、この地は都にも奈良にも近く」
「川が多く土地もよいです」
「米も多く採れますし」
「商いもしやすいです」
「ここを手に入れるとな」
 石山がある大坂の地をというのだ。
「天下を治めるのに非常によい」
「それは確かに」
「この石山は天下の要地です」
「ここを抑えれば四国や山陽にも目が向きますね」
「まことによい地です」
「だからな」 
 それ故にというのだ。
「織田家もな」
「この地が欲しい」
「そのこともですか」
「法主様はおわかりですか」
「うむ」 
 まさにという返事だった。
「織田家が望んでいてそしてな」
「他の場所でも信心出来る」
「また戦の世が終わるなら」
「もう石やんにいる必要はない」
「他の場においてですか」
「総本山を移せばよい」 
 そうすればというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「織田殿とはですか」
「これからは石山を出ることも考えて」
「そのうえで、ですか」
「織田殿と講和の話がする時になれば」
 もうそのことを考えて言うのだった。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「法主様がそう言われるのなら」
「我等もです」
 周りも頷いた、そうしてだった。
 顕如は織田家が一行一揆を平定し石山だけとしそうして幕府も毛利家も降すと織田家と和議を結び降った。そのうえで石山を去ってだった。
 一旦紀伊に移った、そうして周りに言った。
「ではやがては都か大坂にな」
「はい、総本山を置き」
「そしてですな」
「泰平の世で、ですな」
「信仰を続けよう」
 こう言ってだった、顕如は泰平の世の一向宗の道を歩みだしていた。もうそこには戦はなく穏やかな顔で暮らす門徒達がいた。


第百二十八話   完


                    2021・1・1
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