雪
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
___私達も、きっとそう思ってた。今はただ悲しかったということしか覚えてない。自分の涙の意味がわからないの! 嫌だよ! 怖いよ! きっと友奈ちゃんも私のことを忘れてしまう!___
「……」
どうして今更、あの時のことを思い出してしまうのだろう。
雑魚寝のアパートで、友奈は額に手の甲を当てていた。
学校があれば遅刻確定の時間帯。アルバイトがお休みだからと言って、ここまで寝てしまうとは思わなかった。生前の仲間たちが見たら、果たしてどんな顔をするのだろうか。
「へっくし!」
友奈はくしゃみをした。
もうすぐでクリスマスだというのに、予算の都合上布団は讃州中学の制服一枚のみ。サーヴァントの体のおかげで体調不良とは無縁だが、これは何とかならないものかとひそかに思っていた。
「お? おはよう友奈ちゃん」
その声に振り向いてみると、同居人の城戸真司が厨房で何やら作っていた。ほんの1Kの部屋。玄関から入ればすぐにリビングルームのこの部屋では、どこで何をしていてもすぐに目に入る。
真司は窓際に置いてある小さな机に、作った料理を乗せた。
「へへ、丁度朝飯ができたところなんだ。一緒に食おうぜ」
ニコニコしながら真司は、焼き立ての餃子を机に置く。眠い目をこすった友奈は、その餃子を見て目を輝かせた。
「うわぁ! すごい! やっぱり真司さんの餃子はすごい!」
「へへっ。だろだろ?」
真司は得意げに笑った。数日前に購入した小型冷蔵庫から牛乳を取り出し、友奈と自分の分をそれぞれのコップに入れた。
「何か、うなされてたみたいだけど、悪い夢でも見てたのか?」
「え? う〜ん……」
友奈は頭を掻く。
「生きていた時のなんだけどね。えっと……あれ?」
それは間違いなかったが、どのシーンなのか具体的な指定ができない。
「樹ちゃん? 風先輩だっけ? それとも夏凛ちゃんだったかな? 東郷さんだったっけ……?」
「どんな夢だったんだ?」
「どんなって……」
四国で勇者をやっていた時の記憶なのだろうが、細かいエピソードが分からない。
「多分……勇者部をやってた時のだと思うよ」
「ああ、勇者部かあ」
真司は感心したように頷いた。
「いやあ、すごいなあ。そんなふうに人助けを勇んでやるって、中々いないよ。俺なんか中学の時なにやってたかな?」
真司は口を曲げる。
「あれ? 俺何やってたっけ? ……ねえ友奈ちゃん。俺って中学の時何やってたっけ?」
「ええ? 私に分かるわけないよ。あ、餃子おいしい!」
外はカリカリ。中はほくほく。そんな最高の餃子を味わいながら、友奈は真司が「あれ?
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ