雪
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」と悩む真司を眺めていた。
「真司さん、今日はバイトだっけ?」
顔を洗い、歯を磨き、讃州中学の制服に着替えた友奈が尋ねた。この世界に来ておおよそ一か月。真司との共同生活にも慣れてきたが、いまだに持っている服装はこれと気に入って買った一着だけだ。
「えっと……」
真司はいつもの水色のダウンジャケットに着替えながらスケジュール帳を開く。
友奈は真司に駆け寄り、言った。
「ねえ、もし今日開いていたら、どこかに行かない? 私も今日はバイトないからさ」
「ああ、いいぜ。今クリスマスシーズンだしな。きっと旨いもんが安く……安く……」
スケジュール帳の十二月のページを見た真司が固まった。
「真司さん?」
「うわ! やべえ!」
真司は思わず転がり、そのままドタドタと着替え始める。
「今日シフト入ってた!」
真司はそのまま慌ただしく部屋を出ていった。
そのまま行こうとしていた真司は、最後に顔を出す。
「ごめん! また今度、なんか埋め合わせするからさ」
「うん! それより、はやく行ってきた方がいいんじゃない?」
「サンキュー! 行ってきます!」
改めて、真司は大慌てで出ていった。
折角の休みに、することがない。
もう一着である水色のジャージに着替えて、友奈は見滝原公園を走っていた。
十二月も中頃。吐く息も白く、見滝原公園の湖には人影も前よりもまばらになっていた。
それでも人はいるもので、時々「こんにちはー!」とあいさつを交わす機会はあった。
おばあちゃんと「こんにちは」を交換し、そのまま見滝原公園の林道のランニングを続ける。
すでに低下した気温で、友奈の吐く息は真っ白になっていた。友奈の動きに連れて、白い水蒸気があふれる。
「……ふぅ」
何週間も使っているペットボトルで水分補給をして汗を拭い、一気に吐き出す。
「ぷはぁ〜……」
友奈は大声でたまった空気を押し出した。冬の増えた新鮮な空気が肺を循環していく。
「くう〜、やっぱり体に沁みる!」
友奈はキャップを閉め、もう一度走り出そうとしたその時。
「誰かああああああ! 引ったくりよおおおおおおおお!」
公園の静寂を、そんな悲鳴が斬り裂いた。
振り向くと、先ほど挨拶を交わしたおばあちゃんの悲鳴。見れば彼女の手荷物が黒マスクの男に奪われていた。
それを見た瞬間、友奈の足は先に動き出していた。
引ったくりの前に仁王立ち、腰を落とす。
「どけこのガキ!」
あろうことか、引ったくりは懐からナイフを取り出した。
振り上げ、友奈のこめかみに向かってきた刃物。だが友奈は、その手首を掴み、そのまま背を向ける。
「とりゃあああ
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