第一章
[2]次話
五年間の苦しみから
アメリカバージニア州でのことである、生きものの保護センターのスタッフであるマイケル=モス黒髪を短く刈っていて黒い髭を顔の下半分全体に生やしている黒い目が印象的な精悍な顔立ちの彼は引き締まった長身に手振りを交えて言った。年齢は二十代後半で妻のアメリカそれに愛犬と共に仲良く暮らしている。
「やっとですね」
「全くよ」
金髪のアフリカ系の女性スタッフが応えた。
「五年ね」
「あの、何でですか」
マイケルの言葉はわからないといったものだった。
「何で飼育放棄してるのに」
「保護させてくれなかったかね」
「俺わからないんですが」
「私もよ」
スタッフもこう返した。
「全くね」
「やっぱりそうですね」
「ええ、ご飯をあげても」
「汚い皿の上にシリアル入れて」
「それも古いシリアルね」
「お水も殆ど取り換えなくて」
ご飯だけでなくだ。
「散歩も連れて行かないで」
「家の裏庭の犬小屋にずっとつないでいてよ」
「怒って叩くだけで名前も呼ばなくて」
「そんなのでね」
「五年ですね」
「私達が何度言っても」
その五年の間にというのだ。
「聞かなかったけれど」
「やっとですね」
「私達が引き取ることに同意してくれたわ」
「飼育放棄してるのに何で引き渡さないんですかね」
「いじめて喜んでいたみたいよ」
「最低ですね」
マイケルはいじめと聞いてこれ以上はないまでに顔を顰めさせて言った。
「本当に」
「ええ、それで獣医さんに診てもらったらかなりの栄養失調で寄生虫も沢山いるから」
「暫くは治療ですね」
「けれど絶対に助かるっていうから」
「暫くはセンターで、ですね」
「ええ、いてもらうわ」
こうした話をした、そしてだった。
二人は折れた耳で茶色の毛がすっかり乱れている大型犬を見た、犬はすっかり弱った感じで全く動かない。
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