暁 〜小説投稿サイト〜
黒猫との旅
第一章
[1/2]

[1] 最後 [2]次話
                黒猫との旅 
 リチャード=イーストウッドはかつてはオーストラリアの法律事務所に勤めていた、金髪を短くしていて鼻は高く引き締まった長身である。彫は深いが穏やかな顔立ちで服装は至ってラフなものである。
 その彼が今旅の途中で知り合ったある日本人の学生にこう言っていた。
「当時交際していた人が飼っていました」
「その猫をですか」
「はい」
 一匹の黒猫を抱きつつだ、リチャードは話した。
「ウィローといって雌です」
「魔法使いみたいな名前ですね」
「そうですね、元は保護猫で」
「交際相手の人がですか」
「飼っていましたが事情が変わり彼女が飼えなくなり」
 それでというのだ。
「私が引き取りました」
「そうですか」
「そしてこれも縁と思い」
 そしてというのだ。
「以前から考えていたのですが」
「旅にですか」
「出ることにしまして」
 それでというのだ。
「家のものをあらかた処分してお金にして」
「お仕事も辞めてですか」
「そうしてウィローと共にです」
「オーストラリア中の旅をはじめられたんですね」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。
「今はこうしてです」
「その娘と一緒にですか」
「オーストラリア中を旅されていますか」
「そうしています」
 キャンベラのある街の喫茶店の中で話した、明るく気さくな表情と声である。そしてテーブルの上にはウィローが座っている。それはまるで女王の様に堂々としている。
「今も」
「そうですか」
「私一人ならです」
「旅をされてもですか」
「はい、ここまで充実したものにはならなかったです」
 こう日本人の学生に話した。
「とても」
「そうでしたか」
「一人での旅は自由ですが」
「それでもですね」
「彼女がいないと」
 そのウィローを見つつ話した。
「とてもです」
「そうですか」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「当時付き合っていた人がタスマニアの保護施設でいた二歳だった彼女を引き取って」
「そして巡り合えて」
「そのことに感謝しています」
「神様にですね」
「そしてウィローと」
 リチャードは彼に笑顔のまま話した、コーヒーを飲んでるがその色はウィローと全く同じものである。
「当時交際していた」
「その人とですか」
「その人とは別れましたが」 
 それでもというのだ。
「ウィローを巡り合わせてくれたのですから」
「だからですか」
「その人にもです」
 まさにというのだ。
「感謝しています」
「左様ですか」
「そうです、そして砂漠に行ったり森に行ったり海辺に行ったり」 
 豊かなオーストラリアの自然の中を巡ってというのだ。
「町や村に入り多くの人と出会って」
「充実され
[1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ