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レーヴァティン
第百九十五話 東国攻めその七

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「この男が脚気の菌があると言ってな」
「そうしてですか」
「それで白米を食べさせ続け」
「腫れが収まらなかったのですか」
「そうなった」
 陸軍はそうだったのだ、海軍が麦飯を導入してそうして脚気の問題を解決していたのに対してそうだったのである。
「大変なことだった」
「とんでもない医者ですな」
「そんな医者はいてはなりません」
「意固地に己の説にこだわってです」
「そして犠牲を出しては」
「しかも戦に害を与えては」
「そうだ、断じてだ」
 それはとだ、英雄も言った。
「それはならない」
「左様ですね」
「幸い幕府にそうした医者はいないですが」
「それでもですね」
「今後もですね」
「そんな医者は用いない」
 最初からというのだ。
「如何に学問が出来てもな」
「それ以前のことですね」
「如何に学問が出来てもですね」
「実際の医者としてそれなら」
「問題ですね」
「そうだ、幕府で言うと軍の筆頭医師だったが」 
 森鴎外のその役職について述べた。
「そして学問では突出していたが」
「医者としてのそれもですね」
「かなりのものだった」
「そうだったのですね」
「そうだったがな、己の説を現実を見ても曲げず」
 そうしてというのだ。
「そのうえで犠牲を出すのならな」
「医者のやるべきことは人を助けることです」
「その傷や病、命を」
「それが出来ないのではですね」
「医者として失格ですね」
「そうだ、だからだ」
 それ故にというのだ。
「俺は用いない」
「左様ですね」
「ではですね」
「そうした医者の話は聞かず」
「そのうえで、ですね」
「そうだ、そして麦飯をだ」
 これをというのだ。
「俺達は食う、いいな」
「そうしましょう」
「我等も麦飯を食い」
「そして他のものも食い」
「しかと戦うのですな」
「そうする」
 こう言ってだった。
 英雄は実際にその夜麦飯を炊かせた、そしてだった。 
 麦飯を食った、そうして共に食う幕臣達に話した。
「美味いな」
「はい、麦飯もです」
「美味いです」
「よく粗末だのと言われますが」
「こちらもまた」
「そうだ、麦飯は美味い」
 英雄が食べてもだ。
「実にな」
「はい、だからですね」
「兵達も食い」
「そして我等もですね」
「麦飯を食うことですね」
「そうする、兵達と同じものを食うこともだ」
 このこともというのだ。
「いいことだ、しかしだ」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「そなた達はだ」 
 ここで英雄は幕臣達に問うた。
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