第二章
[8]前話
雄ライオンを四匹でじっと見据えた、雄ライオンはずっと狐を見ていた。それは獲物として見ていることは明らかだったが。
それでもだ、母子は。
逆に雄ライオンを威嚇しだした、一家の亭主と思われる彼は家族にそうされて仕方ないと思ったのか。
その場から去っていった、するとだった。
母も子供達も狐の周りから去った、ラクはその一部始終を見てサトに話した。
「ライオンは困っている相手を襲わないと言われていますが」
「誇り高い生きものなので」
「まさに今はそうでしたね」
「そうでしたね」
「あの狐を助けてくれました」
「なら後は」
「我々の仕事ですね」
こうサトに言ってだった。
二人でジープを狐のいる場所に向かわせた、狐は二人が向かう間に道の横の茂みに身体を引き摺って入った、だが。
二人はその狐を救い出して保護区の治療施設に連れていき手当をした、狐は腰の骨を折っていたが。
「完治します」
「そうなりますか」
「大丈夫ですか」
「はい」
獣医は狐を連れて来た二人に話した。
「よかったですね、ライオンに囲まれても」
「襲われなかったので」
「逆に護ってもらったので」
「本当によかったですね」
「運河よかったですね」
「全くです、この子はラックと名付けましょう」
獣医は二人に狐の名前を提案した。
「ライオンに助けられそしてお二人に助けてもらった」
「運のいい子なので」
「だからですね」
「はい、雄ですし」
性別のこともあってというのだ。
「ラックでいいでしょう、ではです」
「ラックはですね」
「これからはですね」
「完治するまでここで預かります」
獣医は二人に話した。
「そうします」
「宜しくお願いします、じゃあラック暫くここでいるんだ」
「運がいいんだ、その運を大切にするんだ」
「コン」
ラックは二人に頷く様に鳴いて応えた、そうしてだった。
怪我が完治するまで治療を受けそこを出てからはつがいの相手を得て多くの子供をもうけた。そのうえで保護区のオオミミギツネの数の増加にも貢献した。傷付いてもライオンに護られ人に助けられた運のいい彼が為したことである。
狐を襲わないライオン 完
2021・3・17
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