第三章
[8]前話
「治療していきますので」
「大丈夫ですか」
「はい、かなり入院は必要ですが」
獣医はキアラに話した。
「必ずです」
「よくなりますか」
「はい、ただ長い間随分酷い虐待を受けていましたね」
獣医はキアラに暗い顔で話した。
「それだけの怪我をしています」
「そうですか」
「酷い目にあった分だけ。願わくば」
キアラの目をじっと見ての言葉だった。
「あの子を大事にして下さい」
「はい」
キアラの返事は一言だった。
「そうさせてもらいます」
「それでは」
獣医はキアラの返事に笑顔になった、フォスは長い間入院したが無事に退院した。その時は怪我もかなりよくなり。
万全とは言い難いがクレタにいた時より遥かに楽に歩ける様になった。そしてご飯もよく食べる様になり。
「そうですか、太ってきて毛並みもですか」
「かなりよくなりました」
キアラは電話でガイドに笑顔で話した。
「よく歩ける様になりましたし」
「それは何よりですね」
「はい、あの時フォスに出会えてよかったです」
クレタ島に旅行に行った時にというのだ。
「心からそう思います」
「それはあの子にとってもですね」
ガイドはキアラの今の言葉にこう返した。
「あの時貴女に会わなかったら」
「その時はですね」
「どうなったか」
「ではフォスにとってもですね」
「貴女と出会えてよかったです」
「そうですか」
「ですからこれからもお願いします」
こうキアラに頼んだ。
「あの子を宜しく」
「もう悲しい思い辛い思いはさせないです」
「ずっと一人でそうした思いに耐えてきたので」
「これからは皆といつも笑顔にいられる様に」
「宜しくお願いします」
ガイドはキアラにこう言った、その電話での会話の後だった。
キアラはフォスと休日の散歩に出た、その時に彼に声をかけた。
「フォス、行こう」
「ワン」
フォスは一声鳴いて応えた、そのうえでキアラと一緒に散歩に出た。その時彼の尻尾はとても楽しそうに振られていた。
クレタでの出会い 完
2021・3・17
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