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戦国異伝供書
第百二十八話 僧籍の婚姻その七

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「裏で何者かがおるやもな」
「先代殿の裏に」
「まさかと思いますが」
「そうした御仁がいますか」
「浅井家にそうした御仁はいないと思いますが」
「家臣の方々には」
「うむ、拙僧もそう思うが」
 それでもというのだ。
「このことは訳がわからぬ」
「ですな、非常に」
「浅井家のこの度の動きは」
「どうにもな」
「わかりませぬな」
「そうであるな、しかしこれでな」
 まさにというのだ。
「織田家は越前まで手に入れてな」
「そうしてより勢力を拡大されましたな」
「加賀とも境を接しましたが」
「それでも」
「織田家ならよい」
 これが顕如の返事だった。
「別にな」
「左様ですな」
「織田家ならばよし」
「越前を手に入れても」
「それでもですな」
「よい、では我等は我等のすべきことをしていこう」
 顕如は織田家が朝倉家を倒し越前を手に入れたことについても話した、だがその暫く後でだった。
 織田家が伊勢の本願寺の領地に仕掛けてきたと聞いて面妖な面持ちになった、そのうえで周りの者達に言った。
「織田家は織田家でじゃな」
「はい、本願寺に仕掛けられた」
「そう言っておられます」
「その様に」
「お互いにか、そして織田家も戦の用意に入ったか」
 信長もというのだ。
「これはな」
「厄介ですな」
「我々としては」
「戦はしないつもりでしたが」
「織田家との戦は」
「もう天下の政に従うつもりでしたが」
「うむ、しかし門徒達には織田家の兵達が攻めんとするならな」
 その時はというのだ。
「戦えと命じるが」
「それでもですな」
「手出しして来ぬなら」
「それならば」
「一切じゃ」
 それこそというのだ。
「動くなとな」
「命じられますか」
「門徒達には」
「一揆は起こすなと」
「その様に」
「織田殿は民が一行一揆を起こさねば何もされぬ」
 攻めることはしないというのだ。
「戦になれば容赦なく攻められるが」
「それでもですな」
「こちらが何もしなければ」
「それで、ですな」
「手出しをされぬ、だから灰色の旗は掲げるでない」
 本願寺の旗はというのだ、一向一揆の時は粗末な生地で作られたその旗を掲げて戦っているのである。
「よいな」
「織田家が攻めぬなら」
「それならですな」
「その政に従う」
「そうすべきですな」
「そうせよ、ただ石山の守りは固める」
 本願寺のそれはというのだ。
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