第二章
[8]前話
「それにくるまるとね」
「かつて家でそうであった様に」
「安心して寝られますか」
「そうなりますか」
「安心して眠れるだけでも違うから」
だからだというのだ。
「ここはだよ」
「はい、寝てもらいましょう」
「毛布にくるまって」
「そうして」
周りはヴィッキーの言葉に頷いた、そうしてだった。
彼に毛布を与えた、すると。
ランバートは毛布にくるまって寝る様になった、そうすると彼は安心して寝られる様になった。そうして。
次第に落ち着き施設にも馴染んでいった、しかも寝る時だけでなく。
「いつもですね」
「毛布身体にかける様になりましたね」
「そうしてもう三歳ですか」
「三歳になってもそうしていますね」
「鬣が生えてもです」
「そうなっていますね」
「そうだね、彼にとってはね」
ヴィッキーはさらに言った。
「毛布は温もりでありね」
「欠かせないものですね」
「かつて家で寝ていたベッドですね」
「とても暖かいもので」
「安心出来るものですね」
「そうだね、ならこれからもだよ」
ヴィッキーは暖かい声で話した。
「彼には毛布が必要だ」
「そうですね、それじゃあです」
「これからも毛布を常に傍に置いておきましょう」
「それが彼を救ってくれるなら」
「そうしていきましょう」
「生きものにも幸せになるべきだよ」
人間と同じくというのだ。
「是非ね」
「そうですよね」
「命ある存在ですから」
「だからこそ」
「うん、それでランバートにはね」
彼にはというと。
「温もりを与えてくれるものが必要だから」
「それが毛布ですね」
「かつて寝ていた家のベッドと同じもの」
「それが必要ですね」
「だからこれからも」
是非にとだ、ヴィッキーはさらに言った。
「毛布を置こう、ランバートもそれでいいね」
「ガウ」
ランバートヴィッキーに応えた、その顔は笑顔に見えた。見れば起きている今も毛布があった。彼の背中に。
毛布好きのライオン 完
2021・3・16
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