第102話『予選G』
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ゲノムに襲われたかと思ったその瞬間、緋翼の前に驚きの人物が立ち塞がった。
「危機一髪だったみたいだね」
「は、はい。ありがとうございます。助かりました……」
この急展開にまだ脳が追いついていないが、ひとまず助けられたのだと、緋翼は目の前の人物に感謝を述べる。するとその人物は「いいんだ」とニッコリ微笑んだ。
サラサラな金髪のストレートヘアーに、まるで外人のような碧眼、騎士を彷彿とさせる軽装と腰には洋風の剣。それがこの人物、【覇軍】所属のアーサーという男である。
「ギ、ギ──」
「ふむ。どうやら思った以上に頑丈らしい。次は本気で斬らないとマズそうだ」
「え、戦うんですか!? そいつ、たぶん10Pt級ですよ!」
「そうだろうね。僕の勘もそう告げてるよ」
恐らく緋翼に襲いかかる直前、アーサーの攻撃を受けたのだろう。右腕を損傷したゲノムが、酷く不愉快な声を上げていた。
しかし、まだ油断はできない。アーサーまでもが、ゲノムを10Pt級だと認めたのだ。彼がとんでもない実力を持っていることは知っているが、ゲノムだって易々と倒れてくれるようなモブ敵ではない。何せ緋翼は手も足も出なかったのだから。
「……一つ提案なんだが、ここは僕に任せてくれないかな?」
「それって……」
「君の代わりに僕が戦うということだよ。こんなとこでリタイアしたくはないだろう?」
「う……」
アーサーは振り返り、そう訊いてきた。それはゲノムから逃れたい緋翼にとっては、願ったり叶ったりな魅力的な提案だ。
ポイントは横取りされることになってしまうが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。悔しいが、リタイアしてしまえば全てが水の泡なのだ。
「お、お願いします……」
緋翼の答えは一つだった。元より身の丈に合わない敵だったのだ。さすがにそれくらいの分別は持ち合わせている。これは戦略的撤退だ。
「そうと決まったら、さっさと逃げ──うぐ」
緋翼が立ち上がろうとすると、身体の痛みがそれを阻害した。まだゲノムからもらったダメージが消えてないらしい。
「せっかくのチャンスなのに……!」
「君はそこでじっとしていてくれればいいよ。無理に身体を動かさない方がいい」
「わかりました……」
ほとんど面識のない相手に守られるのは不安だが、アーサーの言い分はもっともだ。無理に動くよりも、今は回復に専念すべきだろう。
彼は人格も優れていると聞く。まさか、自分から提案しておいて逃げるなんてマネはしないだろうと信じたい。
「それじゃあ──行くよ」
緋翼の返事を聞いて、アーサーの剣を握る両手に力が入った。黄金の彫刻が刻ま
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