第102話『予選G』
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い、この茨も魔術によるものだ。
「これじゃ先に進めない……!」
「諦めるのは早いよ。再生するよりも早く通り抜ければいいだけ」
「でもそれはさすがに……」
無理だ、と思った。これが茨の壁であるならまだしも、ざっと100m以上は続く森なのだ。通る道を作ったとして、その距離を数秒で駆け抜けること自体困難である。
「やらなきゃ──負けるよ」
「え……うわっ!?」
風香がそう呟いた瞬間、彼女の身体から風が放出される。その勢いに思わず飛ばされそうになるも、晴登は何とか堪えた。
一体何事かと見ると、彼女の右脚を風が覆っている。晴登の"風の加護"と似たような感じだが、規模は"足"ではなく"脚"にまで至っていた。
「君も準備して。私が道を作るから、全力でそこを走るの。ついて来れなかったら……さすがに今回はカバーできないから、そのつもりで」
「う……わかりました」
腹を決めるしかなかった。そもそも、彼女の力を借りられる今のこの状況を保つことが、数少ない晴登の勝ち筋なのだ。文句を言ってはいられない。
この短距離を数秒で突っ切るには、"風の加護"では足りないな。またアレの出番か。
「あとは魔力が保つかどうか……」
ただでさえ、現在の晴登の魔力はもう底をつこうとしている。そこで全力を出そうものなら、魔力切れを起こしても不思議ではない。それこそ、遅くても着実に茨を掻い潜れば、魔力は温存できるだろう。でも、何度でも言うがそれは許されない。勝つために──限界を超える。
「ふぅ……いつでもいけます。猿飛さん」
「了解。それじゃあ今から道を作るよ」
手を地面につき、足先に意識と魔力を集中させて、いつでも発射できるように晴登は構える。
一方風香は右脚を上げ、次の瞬間、
「"飄槍突"っ!!」
「うぉっ!?」
風香が右脚を突き出した途端、吹き荒れた風の槍が轟音と共に茨の森に大きな穴を作り出す。
そのあまりの威力に圧倒された晴登だったが、風香が走り始めたのを見て慌てて飛び出した。
「"噴射"!!」
足からジェットのように風を放出することから付けたこの技名。まんまなのだが、言いやすくて個人的に好きである。
さて、さっきは崖を登るために使ったが、今回は真上ではなく真横だ。少しでも角度をミスれば頭から地面に突っ込んでしまうため、本来ならば細心の注意を払いたいところだが、もう背に腹は代えられない。
「姿勢を、正す……!」
水泳で蹴伸びというものを習ったが、イメージはそんな感じ。不格好だろうと、真っ直ぐ進めるのであればそれに倣うのは至極当然。
穴を通り抜ける一瞬の間
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