第102話『予選G』
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火がついた瞬間だった。
*
夏の森はより木々が鬱蒼とし、緑一色に染まるはずなのだが、その一角で不自然な色を示す地帯があった。その色は夏にあまりにも似つかわしくなく、違和感と呼ばざるを得ない。
『あ〜っと、なんということでしょうか!』
ジョーカーが慌てたように叫ぶ。それもそのはず、さっきまで緑一色だった予選会場が、いつの間にか"白"で埋め尽くされたのだから。
この広場──"射的"の会場は、大雪原と化していた。
『これは一体誰の仕業でしょうか!? な、なんと、夏なのに雪が降っています! まさに異常気象です!』
ジョーカーの興奮は止まらない。それは他の選手も例外ではなかった。季節外れの降雪に、誰もが目を奪われる。
そんな中、ホッと一息をつく少女がいた。
「ふぅ、こんなもんかな。結構疲れた〜……」
肩で息をしながら、空を見上げる銀髪の少女──結月は、予想以上の疲労を嘆く。さすがに魔力を使いすぎた。
それもそのはず、"夏を冬に変える"なんて、もはや人間業ではない。並大抵の魔術師には到底成し遂げられない凄技だ。
──では、なぜ結月はそれを行なったのか。
答えは簡単。的である水晶が魔力に反応するというのであれば、大気を魔力で満たせば良いだけのこと。そうすれば領土の範囲内の的を一網打尽という算段である。
「さて、結果は……」
我ながら完璧な作戦だ。いや、ほとんど力技ではあるのだが、それはそれ。
結月は水晶を見渡し、成果を確認しようと──
「……ん?」
結月は首を傾げる。なぜなら目の前の状況が理解できないからだ。どうして、"水晶が点滅している"のだろうか。
『まさかこんな事態が起ころうとは! 会場中が魔力を満たされたせいで、全ての的がヒットとリセットを繰り返してしまっています!』
「えぇっ!?」
ジョーカーの説明を聞いて、結月は驚きながら納得する。
確かにできるだけ領土を広範囲にしようと思ってはいたが、まさか会場全体を覆ってしまったとは。自分の力でそこまでできたことが不思議でならない。鬼の力って凄いな……。
腕輪を見ると、目まぐるしいスピードで獲得ポイントが5桁、6桁と増えていた。え、怖い。
『ど、どうしましょう。これでは競技の進行に支障が……』
「あ、やば……」
やっちゃったと、結月は一人反省する。今や"射的"は結月の独壇場。的が全て結月のものとなるので、残り時間もずっとこの状態ならば、他の選手はどうすればいいのか。
「う〜ん……解除!」
『おぉっと!? 今度は雪が突然消えました! ここまで大がかりな魔術、一体誰の仕業でしょうか?!』
「うへぇ
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