第百二十八話 僧籍の婚姻その一
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第百二十八話 僧籍の婚姻
顕如は本願寺に妻を迎える時を目の前にしていた、その中で彼は周りに対して澄んだ声でこんなことを言った。
「我等一向宗は僧籍でも妻を迎えられる」
「はい、親鸞上人の頃よりです」
「それが出来ます」
「他の宗派はおおっぴらに出来ませぬが」
「我等は違います」
「それを堕落だと言う者もいるが」
それでもというのだ。
「実はな」
「それは違いますな」
「僧籍でもよき家を持つべきである」
「左様ですな」
「妻を迎え子をもうけてもよし」
「それが一向宗の教えである」
こう言うのだった。
「だからな」
「はい、それ故に」
「これよりですな」
「法主様も迎えられますな」
「奥方様を」
「そうなる、そしてな」
顕如は微笑んで話した。
「拙僧はよき夫となりよき家をな」
「もうけられますな」
「奥方様と」
「そうされますな」
「これよりな、では間もなく六角家から来る」
今は織田家の下にあるこの家からというのだ。
「喜んで迎えな」
「祝宴を挙げ」
「そうしてですな」
「そのうえで、ですな」
「家に入ろう」
こう言ってだ、顕如は己と同じく若いその妻を迎えた。見れば小柄であどけない顔をしている。如春尼を出家の名をいう彼女とだ。
夫婦になった、そこで彼は妻に言った。
「ではこれより」
「はい、拙僧達はですね」
「夫婦となり共に暮らしていく」
「そうなりますね」
「宜しく頼む」
顕如は妻に微笑んで話した。
「共に本願寺を守り門徒達もな」
「守っていきますね」
「そうしていこう、これから何かとあるが」
それでもというのだ。
「一人ではないのだからな」
「二人だからですね」
「苦労をすることも多いであろうが」
それでもというのだ。
「やっていける、だからな」
「これよりですね」
「宜しく頼む」
「それでは」
如春尼は夫に謹んで応えた、そしてだった。
彼は妻も迎えそのうえで本願寺を動かしていった、妻の支えを得た彼は本願寺をさらによく動かしていった。
その間信長は己の領地を豊かにしていった、それは本願寺のある摂津も同じで。
「いや、周りはです」
「もう織田家の領地ですが」
「その政の見事なこと」
「田畑も街も栄え」
「堤もよく築かれ」
「橋も多くなってきましたな」
「この石山の周りは川ばかりである」
本願寺のあるこの地の周りはとだ、顕如は述べた。
「だから守りはよいが」
「そして船の行き来はいいですが」
「それでもですな」
「水難も多く」
「歩いて進むには不便な場です」
「それを堤だけでなく橋も築かれ」
信長は石山の周りもそうしているのだ、己の領地であるので治めている
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