ムーの遺産
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章。
紋章は青年を覆うように、一つ、また一つと増えていく。やがて彼の前後左右に合計四つが出現した。
「何をするつもりだ……?」
ハルトの問いに、青年は答えない。両手を左右に広げると、紋章はキリキリと音を立てながら回転する。
そして。
「電波変換!」
紫の光の柱が青年を包む。より一際大きなムーの紋章が出現し。
青年の姿は、すでに人間の姿ではなかった。
黒いボディと紫のゴーグル。そして、紫の炎のような非物質の右手。右手から燃え盛る紫の炎を握りつぶした彼は、告げた。
「消えろ……!」
紫の右手が、丸い光を帯びていく。
発射された、無数の拳。
「!」
「キャスター!」
それは、部屋全体を無差別に攻撃。土煙が舞い上がり、視界が見えなくなる。
「頼む!」
変身はできない。だが、それでも補助魔法は使うことができたのは幸いだった。
『ディフェンド プリーズ』
出現した盾の魔法陣。飛来する拳と相殺するものの、周囲から襲い来る余波までは消しきれない。
ハルトもコウスケもほむらも、その勢いに負けて吹き飛ぶ。
「ぐっ……!」
ハルトは体をひねり、青年の姿を睨む。
「あれって、この前可奈美ちゃんたちが遭遇したって言ってたやつか……?」
そして、ただ一人。
魔法陣の盾をもったキャスターだけが、突然の敵と同じ目線で立っていた。
「……貴様、何者だ?」
敵の目線も彼女へ移る。
キャスターは淡々と答えた。
「私はキャスターのサーヴァント。それ以上でもそれ以下でもない」
「サーヴァント……貴様も聖杯戦争の参加者か」
「……お前も……」
キャスターはどこからか、金色のペンダントを取り出す。中心に円の付いた十字架のそれを掲げる。
そして。
「セットアップ」
『stand by ready』
足元に黒の魔法陣が出現する。円形のウィザードのそれとは違い、三角形のそれは、ゆったりと回転しながら光を放つ。
「……貴様。なぜここで力を使える?」
「かつて、私はムーと戦ったことがある」
キャスターの頬に、赤い線が刻まれていく。目から真っすぐ伸びるそれは、まるで血の涙のようだった。
「その時、ムーの力もまた収拾してある。ムーの空間の中での術式の組み換えなど造作もない」
やがて、キャスターの背中に漆黒の翼が生える。合計四枚の翼を羽ばたかせ、浮かび上がるキャスターは、まさに堕天使のような輝きだった。
「サーヴァント、キャスター。参る」
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