父よ、母よ、妹よ 前編
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べく、涙を流しながら懸命に瓦礫を持ち上げようとしていた。
(このままでは母親の命が!早く助けなければ!)
志郎は急いで少年の方へと駆け寄る。しかし、少年は志郎の姿を見るやいなや、顔を赤くして彼を睨みつけた。
その様子に思わず志郎は歩みを止める。
「この悪魔!!!母さんに近寄るな!」
少年は大きく手を広げ、母親を守ろうとする。その姿に志郎は言葉を失った。
少年は手頃な大きさの瓦礫を拾って志郎に投げつける。
「どっか行け!このテロリスト!!こんなことして何が楽しいんだ!!」
怒りの形相で瓦礫を投げつけられても改造人間である志郎には傷一つつけられない。しかし、もっと内面的な柔らかい何かが抉られていく気がした。
「………すまない」
志郎はポツリと少年に謝罪すると、半壊したスタジアムを見つめながら寂しげに去っていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
志郎はしばらくしてアジトに帰投した。そこはとある廃ビルの地下にあるアンチショッカー同盟北京支部である。
北京支部は数ある同盟の支部の中でも中国大陸の解放を目指す支部である。また、地理的な近さもあって日本支部と共同作戦を行うことも多い。
同盟員たちが他支部から送られてきた銃や弾薬を整理する中、帰投した志郎はどんよりとした黒いオーラを力強く放っていた。
そんな志郎を元気づけようと1組の姉弟が歩み寄る。彼らは珠純子とその弟のシゲルだ。
「志郎さん…しっかりして。リーダーなんでしょ?」
「志郎兄ちゃん、元気出してよ」
そして珠姉弟に遅れて1人の青年が志郎に声をかけた。彼は北京支部副支部長にして、志郎と同じ改造人間。結城丈二ことライダーマンである。
「風見、お前がそんなのじゃ皆に示しがつかないぞ。ドクトルGの暗殺にこそ失敗したが、ショッカーに打撃を与えることはできたんだ。喜ぶべきことじゃないのか?」
彼らはなんとか志郎を元気づけようと声をかけたのだが、当の本人には上の空だった。何を語りかけても空虚で、ずっと黙り込んでいる。
「ちょっと外に出てくる………」
そう言うと志郎は変装をして、外へと出ていった。珠姉弟と結城には彼の寂しそうな背中を眺めることしかできなかった。
「……志郎さん、元気ないわね」
「そりゃそうだろう。アイツのせいじゃないにしろ多くの一般人を巻き込んでしまったんだ。責任を感じるさ」
結城がそう言うと彼らは一様に暗い顔をして黙り込んだ。彼らも志郎と同じく、無関係の市民を闘争に巻き込んでしまったことに心を痛めていた。
そんな中―、
「ハッ、北京支部の支部
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