暁 〜小説投稿サイト〜
モンスターハンター 隻腕のドルフ
第三話 招集
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 招集は、ある日突然行われた。


 こんこん、と、玄関扉が軽く叩かれる。彼に来客があることは珍しい。誰かが来るという話も聞いていない。だが、先日のバークとの会話で浮上した話題。扉の向こうにいるであろう来訪者、ドルフの予想通りであれば、それはギルドの職員だろう。

 依頼を受けておらず、村にいる間は毎晩、日記を付けることがドルフの日課である。来訪者は、ちょうど、ドルフが日記をつけ始めようと、紙と筆を用意した時に現れた。

 仕方なく筆を机に置き、扉へ向かうドルフ。扉を開くと、そこにはやはり、ギルドの職員がいた。ドルフを食事に誘った新米受付嬢、アニファである。

「あの……こんばんは、ドルフさん」
「……ああ」

 彼女の名前がアニファというものである、ということを、ドルフは最近になって漸く覚えた。一人で勝手に、今まで名前も覚えていなかった罪悪感を覚えながら、彼は口を開いた。

「招集か?」
「ええ……はい。ギルドまでご同行お願いします」
「分かった。少し待ってくれ」

 アニファの返事も予想通りだった。他に何か、問題を起こした覚えもない。例の一件だろう。大方、調査のメンバーが今になってやっと決まった、というところか。

 部屋着から装備に着替えようと、扉を閉めようとするドルフ。しかし、それをアニファが止めた。

「あ、今日はお話だけですので……装備は結構です」
「そうか、分かった」

 財布と護身用のナイフだけを持ち、ドルフは家を出た。ギルドまでの道中、彼らは二人だったが、そこに会話はない。少し気まずい雰囲気が流れつつも、二人は無事に集会場に到着した。


(…………)


 集会場に一歩踏み込んだ瞬間、ひりついた空気がドルフの頬を刺す。刺々しく、それでいて重々しい。いつもの集会場にはない緊張感のようなものが張り詰めていた。

「こちらです」

 アニファに案内され、奥の部屋に通されるドルフ。滅多に入ることのない小さな個室には、ドルフを除いて四人のハンターと、二人のギルド職員、それからドルフを連れてきたアニファの、計八名がいた。

「アニファ、ただいま戻りました」

 そう言って頭を下げると、二人いた職員のうちの一人、ベラーナ村ギルドのギルドマスターであるバッゾが小さく手を挙げた。

「ご苦労。下がっていいよ」

 元ハンターで、今なお現役時代に見劣りしない屈強な肉体を維持しているバッゾ。優しい声で告げられた、彼のその短い言葉に、アニファは少々悲しげな表情を浮かべ、そして再び頭を下げた。

「……はい。失礼します」

 それだけ言って、アニファは退室してしまった。彼女の役目は、あくまでドルフをここまで連れてくるだけ。それより先の話を聞く価値はないと判断されたのだろう
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ