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戦国異伝供書
第百二十七話 橙から灰色へその九
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「今は六角家におられる」
「今六角家は織田家に降ってです」
「もう力はありませぬが」
「格はありますな」
「今尚」
「左様、織田家も万石取りの家として遇しておられる」
 その六角家を降した信長もというのだ。
「そうであるからな」
「今もですか」
「その姫様は六角家におられますな」
「そうなっていますな」
「そうじゃ、また織田家もな」
 再び信長のことを話した。
「その姫君を大事に扱ってくれている」
「ですな、どうもです」
「織田殿はよく横紙破りと言われ」
「非道も辞さぬと言われていますが」
「そうした方ではありませぬな」
「それはおそらくかつての傾きから言われておる」
 うつけと言われた時期のそれだというのだ。
「織田殿は尾張の大うつけと呼ばれておったな」
「はい、奇矯な身なりをしてです」
「街で好き勝手に暴れ」
「歩いて瓜や柿を食う様な」
「とてもそれなりの家の嫡子には思えぬ」
「そう言われていますな」
「それは実は傾いておられたのじゃ」
 当時の信長はというのだ。
「だがそれがな」
「そうした噂の元になっていますか」
「横紙破りで非道も辞さぬ」
「そうした御仁であると」
「そうじゃ、しかしその実は天下泰平を望まれ」 
 そしてというのだ。
「その政もな」
「天下をよくする政であり」
「民にとってもよい」
「そうした政ですな」
「左様、関がなくなり」
 移動の際に通らねばならず通れば多くの銭を取られる場所がというのだ、これが民の負担になっていたのだ。
「そして楽市楽座でな」
「自由に商いが出来る様になり」
「民は楽になっている」
「そうなのですな」
「人の行き来が増え商いが盛んになって織田家は豊かになりな」
 それと共にというのだ。
「そうなっておる、また年貢は安く」
「ですな、相模の北条家の様に」
「そうしておられますな」
「織田殿は」
「そして綿や胡麻等を植えさせ」 
 そうしたものをというのだ。
「それを売らせて百姓達も豊かにさせておるな」
「ですな、そうしたこともです」
「織田殿は進めておられます」
「それならばですか」
「我々としては」
「織田家と協力し」
 対するのではなくというのだ。
「天下泰平をもたらす力となろう」
「そうしますか」
「織田殿はそれだけの方なので」
「では、ですか」
「我等は幕府に従いますか」
「悪人を認めて下さる」
 本願寺の考えで言う悪人達である、生きていく中でどうしても罪を犯してしまう者達のことである。
「織田殿はそうでもあるな」
「だからこそ民の為に尽力され」
「そしてですな」
「ああしたことをされている」
「そのこともあって」
「我等は本来の姿に戻り」
 本願寺のそれにとい
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