第二話 ベラーナ村
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奨されている。
バークはカウンターに置かれたスリンガーを持ち、指で弄り始めた。おもちゃを与えられた子供のように。
「どうだ、このスリンガーとやらの使い心地は」
「無くても別に困らん」
「辛辣だな……」
試験運用小型ボウガン、スリンガー。現在できることは、ペイントボールや音爆弾、閃光玉などを射出することと、現地で調達した石ころや鉱石を撃ち出すこと、それから、スリンガー用に調整された弾丸を撃ち出すこと。この中で利点を強く感じられたのは、モンスターにマーキングをするためのペイントボールを、高速で射出することができる、という点のみだ。
そもそも、音爆弾や閃光玉は投擲した方が早い。石ころや鉱石も同等の理由。スリンガー用に調整された小型の弾丸を撃ち出すこともできるが、前提として、ハンターというのは常に限界に近い量の荷物を持って行動しているものである。そこに、新たにボウガン用の弾丸を加えることは難しい。麻痺や睡眠、毒といった状態異常を引き起こさせる弾丸が撃てるのは魅力的だが、弾丸自体も小型化してしまっているため、結局のところ量が必要になってしまうし、それならば毒を塗った投げナイフで間に合っている。
結果、現段階でのドルフの評価は、『別に無くてもいい』といった、微妙なものなのである。
「まあ、あくまでも試験運用段階の装備だからな。本運用じゃもっと凄い機能を搭載するって噂だ。何年先のことになるかは分からんがな」
「凄い機能、な」
どこまでいっても、ボウガンはボウガンだ。ドルフには、これが今以上に使いやすい道具になる未来が思い浮かばなかった。
「ほれ。機能に問題はない。ついでに、装備のメンテもしとくか?」
「装備はいい。自分でできる」
「そうか」
返されたスリンガーを左腕に装着していると、突然、バークが話を切り出した。
「それより、聞いたか?」
「何をだ?」
何のことだか分からないが、恐らく、聞いてはいない。そもそも、ドルフはこの半月程度、村を空けていたのだ。聞いていない確率の方が高い。何のことだかは分からないが。
バークは神妙な面持ちで、カウンターに肘を置き、身を預ける。そして、もっと顔を近付けるように、指を動かした。
「近々、ギルドが『塔』の調査依頼を出すみたいだ。何でも、妙なエネルギーを観測した、とかでな」
声を控えめにしつつ、バークがそう告げる。
塔、というのは、古代人が建造した謎の超巨大建造物のことだ。この世界に幾つか存在しているらしく、そのうちの一つが、ベラーナ村の近隣にある。近隣といっても、流石に歩いて向かえるような距離ではないが。
この塔は、基本的に嵐のようなもので覆われていて、滅多に立ち入ることができない。その上、内部構造は複雑
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