第一話 岩竜
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
去りにした剣目掛けて。
タイミングは恐ろしく正確だった。男が剣を手に取るのと、毒ガスが霧散して消えるのはほぼ同時で、男はそのまま剣を引き抜くと、隙だらけのバサルモスの腹部に向け、剣を突き出した。
彼の感覚では、もう間もなく。
突き出された剣は、腹部外殻の最も傷が深いところを捉え、激しい音を響かせながら突いた。少しの抵抗と、そして、何かが壊れるような感触。これまでの戦闘でダメージを蓄積させたバサルモスの腹部外殻は、その一撃で、砕けるように剥がれ落ちたのだ。
男は手を止めない。そのままとどめを刺そうと、突き出した剣に力を込める。雄叫びをあげることもなく、目を見開くこともなく、ただただ冷静に、冷徹に、剥き出しになった筋肉に向け、剣を突き出したのだ。
??そして。
……グオォォォオォ……
岩竜の力無き咆哮が、火山内に響き渡った。男が剣を引き抜くと、支えを失ったバサルモスの体躯は横倒しになって、土煙をあげ、そして動かなくなった。
男は、大剣に付着した血を落とすため、その場で一度、大きく素振りをすると、それを背負い直しながらぼそりと呟いた。
『暑い』
人を簡単に殺せるほどの力を持ったモンスターと、先程まで戦っていたとは思えないほど落ち着いた声で。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ