第一話 岩竜
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硬い岩石に覆われたバサルモスの体表は、生半可な武器では傷一つ付かない。鉄で打った剣では、恐らく、剣の方が負けて折れてしまうだろう。
それは、男の剣とて同じ。鉄よりも硬い素材で作られてはいるものの、あまり無茶をしすぎては、討伐するよりも先に剣が死んでしまう。
男が狙ったのは、バサルモスの腹部だ。バサルモスのあの硬い外殻は、あくまでも外殻であり、皮膚そのものが硬質化しているわけではない。柔らかい皮膚の表面を、硬い岩石が覆っているだけにすぎない。早い話、その岩石を取っ払ってしまえば、バサルモス最大の長所は失われることになる。
そして、それを最も容易く行えるのが、腹部。可動域の問題か、腹部の岩石だけは他に比べてやや薄く、脆い。そのため、腹部を集中的に狙って外殻を砕き、その内側を攻めるのが、バサルモス討伐のセオリーだ。
男の一撃は、バサルモスの胸部から腹部にかけてを斬り裂いた。一刀両断、とまではいかないが、高位素材で作られた男の大剣は、バサルモスの硬い外殻に確かに傷を付けている。一撃一撃は小さな傷でも、それが積もればいずれは岩をも砕く一撃となる。塵も積もれば山となる、というやつだ。
続けて男は身を捻り、いまだ動きが鈍いままのバサルモスに向け、横薙ぎの斬撃を加えた。一般人なら持ち上げることも叶わず、ハンターであっても満足に振るうことは難しいとされる大剣。その重量と遠心力を活かして放たれた渾身の一撃は、バサルモスの腹部外殻を大きく削り取り、そのまま地面に突き刺さって土煙をあげ、静止した。
直後、漸く動き出したバサルモスが、その体を小さく震わせる。バサルモス、及びその成体であるグラビモスと呼ばれるモンスターが、この体を震わせる行動をとるのは、下腹部からガスを放出する時。バサルモスが放出するのは……毒ガスだ。
男はあろうことか、地面に突き刺さった大剣の柄を手放し、バサルモスから距離を取った。戦闘中に武器を手放すなど、ハンターにあるまじき行為だが、男は把握していたのだ。毒ガスを放出する際、バサルモスは身動きが取れなくなる。あれは元々、地中に潜ったバサルモスが、近付く獲物を仕留めるために放出するもので、激しい動きを伴って行うものではないからだ。
男が距離を取るとすぐに、バサルモスの下腹部から目に見えて有毒そうなガスが放出される。色で表すとすれば、紫。それを吸い込むまいと、男は左腕で口元を覆った。
徐々に毒ガスの濃度が下がっていく。バサルモスは何も、毒に特化したモンスターではない。たとえば沼地等に生息する『ゲリョス』と呼ばれるモンスターのように、大量の毒を一度に生成することはできない。毒ガスを放出していられる時間も、そう長くはない。
その隙を見計らって、男は再び駆け出した。真っ直ぐ、置き
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