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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(2)〜交戦星域首脳会議〜
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イレの交戦星域における評価は良く言えば”食えない千軍万馬の指導者”、悪く言えば”バーラトと交戦星域を渡り歩く狡猾な自国優先主義者”といった見解が主流である。戦場清掃というインフラを一手に担うヴァンフリートの特権を巧みに使い動いている。
 その人民元帥がヴァンフリートに構成邦軍を招き入れヴァンフリートの為に血を流させる。
 ――その意味は大きい、今はわからずとも、きっと。
 グラスの内面にある自身でも意識していないなにかがそう決めつけていた。

「ヴァンフリートは独特なところです」
 佐官時代に数度前線の参謀を経験したオスマンは苦味のこもった顔で言った。【交戦星域】から離れた人々、特に宇宙軍の兵役を経験した人々にとってヴァンフリート人は好悪が入り混じった存在である。彼らは危険を顧みず、戦場となった場所を清掃し、戦死した同胞の死体を探し、そして彼らの血税の残骸のみならず時には戦死者の私物を【ボーナス】として売り払うのだ。
 オスマンが士官学校で交友を持った友人のうち、十数名が戦死し、そのなかの数名は幸運にもヴァンフリート人の手でハイネセン・ポリスに”一部”が戻ってきた。
「そうであろうな」
 オスマンの感じる苦味はグラスも覚えがある。ヴァンフリートの【役得】を寛容に許す気分にはなれない――割り切れない人間を批判することも難しい。ヴァンフリート人と握手を交わすことが多くなってからも遺族の嫌悪は理解できる――貧困地域に生まれたヴァンフリート人が無意識の差別意識に対する怒りも理解できる――そしてその双方の側にアスターテ人は立たない、後ろめたさを感じないかといえば嘘になる。

 場の空気を一切読まない胴間声が同盟宇宙軍将校団の鬱屈とした空気を消し飛ばした。
「ヤァお三方!!いいニュースだ!私も既に元帥と話をし、素晴らしい取引(ディール)をした!ヴァンフリートの市民達は素晴らしい食事と勇壮なティアマトの青年達を迎えることになるだろう!卑劣な侵略者には悪夢の日となり、我々にとっては偉大なる日になるだろう!!」
 ”ビッグディーラー”ヒューイ・タロットである。ショービジネスマンにして食品加工業者、”古き良きティアマト人”にしてティアマト帰郷主義者の大神輿としてティアマト政府参事会の議長席に飛び込んだお騒がせ政治家だ。

「レーションの納入ですか?タロット議長」
 オスマンはニヤリと笑いながら話しかける。
「ただのレーションではない!君たちの兵が普段の糧食に文句をつけるようになったら申し訳ないな!」
 HAHAHAHAHA!!!と笑うタロットをちらりと見てから、ペイリン首相は笑顔を引き攣らせる。
「それ初耳なのですが、決議文への加筆が必要です、オスマン課長、人民元帥閣下と少々打ち合わせを‥‥‥」
「あぁ分かった、もちろんだ――お
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