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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(2)〜交戦星域首脳会議〜
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盟軍人が手を差し出す。40代前半の少将であるが浅黒い肌に顎鬚をのばした姿は堂々としており実際の年齢よりも重厚さを醸し出している。
「貴官は――」
「オブザーバーの統合作戦本部統合運用部計画課長のオスマンと申します」
「この緊急時にハイネセンポリスからわざわざ、ご苦労ですな」
 オブザーバーというが同盟軍の実務者として送り込まれたということか――グラスは素早く脳内でバーラトの意向を打算する。
「いえいえ、構成邦の皆様のご協力があっての同盟軍であります」

 今回の首脳会議の目的はヴァンフリートの要請に対する最終的回答のみならず同盟政府へ向けた圧力としての役割もある。ペイリン首相が議長役を務めるのはトリューニヒト国防委員長との親交があることも理由の一つである。
「我々としても同盟軍との連携が必要です。ヴァンフリートの同胞を救うのみならず、ですからな」
 ヴァンフリート4=2基地――第6次イゼルローン攻略戦における奇襲の要となる基地。
現在は公表されていないがシドニー・シトレの第五次イゼルローン攻略戦においてイゼルローン要塞の一部を損傷させ、昨年はロボス演習計画による【交戦星域】における大規模演習による示威活動と海賊(帝国軍私掠艦隊)掃討作戦により、会戦規模の兵力の侵入を封じ込め、非有人宙域における戦闘が続いている中でアルレスハイム星域会戦から2年ぶりに有人宙域が戦場になったことで首脳会議の開催も当然のことである、と受け止められている。
 
「イゼルローン要塞の攻略は重要です」
 フー天民総統がオスマン少将の言葉を引き継いだ。
「つまりですな、我々は帝国への恭順の為に非攻を唱えているのではないのです。敵を防ぎ、国民を豊かにすることこそが戦争に勝つための第一義、豊かなればこそ軍も強大になるのです」
 オスマン少将は必要以上に実直な態度を示した。
「……非攻を唱えていた貴国やいまだ復興途上のエル・ファシルも義勇軍の派遣に乗り気だとは」
 大夏天民国はイゼルローン要塞が生まれる前、【コルネリアスの大侵攻】以後から勃興した復讐主義極右運動に対し代々”非攻”を唱え過剰な軍国主義に反対をしてきた。一方で防衛戦においては血を流し、軍への協力を惜しまない。憂国騎士団等の極右団体からは嫌悪され反同盟カルト宗教国家と呼ばれることすらある。
 グラスも偏見を抱いていたが実際に交流すると風変りではあるが宗教国家の指導者である彼らは理性的な打算により巧みに宗教道徳と現実政治家の顔を使い分けている――だから嫌われるのだというのも正論であるが。

「シドニー・シトレ元帥は2年前、要塞に傷を残しました、であれば次に賭ける価値は十二分にあると私は考えます。えぇその通り、この度は異例続きのようですが、これも上帝が我々に与えた試練です、明確な意図をもち、
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